銀のエンゼル

映画「銀のエンゼル」 鈴井貴之

あらすじ(ネタバレなし)

北海道のとある町の外れにあるコンビニ(ローソン)。そこに集まる人たちが繰り広げる人間模様を描く。
ある日、コンビニを経営する北島昇一の妻・佐和子が、交通事故による怪我で入院してしまう。それまでコンビニで多くのことを担っていた妻が離脱してしまい、昇一は普段はやらない夜勤をもこなすことになる。
彼は、そこにいろいろな人々が来ていることを知り、それに加えて娘の由希のことも知っていくことになる。

感想(ネタバレなし)

キャストとキャラクターに頼った作品でした。
ストーリーとしては基本的には何もありません。それどころか、中途半端に終ってしまった感さえあります。
「あのシーンはなんだったの?」とか「結局あの人どうなったの?」とか、釈然としない部分が多かったです。

ただ、私は俳優頼りの映画はわりと好きで、その点では大いに楽しめました。
小日向文世、大泉洋、西島秀俊。この三人は期待通りの演技でした。さらに書いておきたいのは、村上ショージと、輪島功一です。
あの元プロボクサーの輪島功一ですが、ただの酔っ払いの役で出てました。ストーリーには全く絡んでこないし、なんの意味もない役なんですが、良い酔っぱらいでした。訳の分からない味が出てました。
村上ショージもちょこっとしか出てこないのですが、心に染みる演技を見せてくれていました。名優小日向文世と並んでいても、全く引けをとらない演技でした。

映画としては普通でした。普通に心温まる優しいお話でした。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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タイトルの「銀のエンゼル」なんですが、ほとんど本編に絡んできませんでしたよね?あの女、なんだったんでしょう。
コンビニオーナーの昇一が夜勤に出るようになって、そのコンビニに来ていた小林明美と10年ぶりに再会する。彼女はチョコボールの銀のエンゼルを集めるも、なかなか5枚集めることができない。「もう少しで集まりそうになると失くしてしまったり、私の人生と一緒。いつも何かひとつ欠けてしまっている。」と、明美は言うのだけれども、その辺りの話は全然映画のテーマになってきません。肩透かしもいいところです。
「自分で選ぶといっつもハズレ。」と言いながら、店員さんに選んでもらっている明美に対して、西島秀俊演じるアルバイトの佐藤君が、「自分で選んだほうがいい。ハズレだとしても、自分で選べば後悔しなくてすむかもしれない。」言うセリフは、もしかしたらこの映画で一番伝えたかったことなのかもしれません。そういうことでタイトルを「銀のエンゼル」にしたのかも知れません。が、ちょっと弱いというか、印象としては薄い感じがしました。

この西島秀俊が演じる佐藤くんは良いキャラでした。ほとんど喋らないのですが、必要な時はボソッと核心に迫ることを言う。彼のことは映画の中ではほとんど語られませんが、映画の雰囲気を作る良いキャラクターでした。佐藤君ずっと木を切ってましたが何だったんですか?おばあちゃんのために近道を作ってたんですよね。そこの娘さんと何かあったんですよね?殺人犯だったんですよね。
確かにそこは語らなくても、映画にはそれ程影響ありませんが、もう少しヒントくれても良かったんじゃないでしょうか。謎の過去を持つ殺人鬼ということで終わらせたかったのでしょうか。

この佐藤君のセリフには、もうひとつ印象的なのがあります。娘が家出をしてしまった勤務中のオーナーに酒を勧めながら、「確かに規則はありますが、杓子定規ではダメです。そこから外れてこそ見えてくるものもある。」といった主旨のセリフです。真面目に一生懸命頑張ってきて、それ故に失敗もしてきてしまった昇一に対する、心に染みる温かいセリフでした。
先ほどの明美に対するセリフも、この昇一に対するセリフも、佐藤君の過去があってのセリフでしょう。だからこそ、もう少し語ってほしいところでした。
とはいえ、こういった細かいところで良いシーンの多い映画でした。

良いシーンといばあれです、クライマックスのシーンです。
父親は全然自分とは向い合ってくれないし、そんな人に何を言っても無駄だと思っていたために、「東京の学校に進学したい。」と父親には打ち明けていなかった昇一の娘・由希。彼女は家出をするのですが、停電のため電車が動かなくなってしまいます。
一方、昇一のコンビニに商品を納品に来るトラック運転手の六ッ木(大泉洋)は、娘が家出をしているのにお店で働いている昇一に対して、「娘が心配じゃないんですか!」と言って詰め寄って、昇一に殴られる。そりゃ昇一が心配してないわけないですからね。その殴られた傷を、電車の中にいた由希に見せに行く。実際には佐藤くんの強烈なパンチの傷だったのですが(笑)。
父のことを少しだけ分かった由希は、家に帰り、父と向き合うことになる。この父と会うシーンが非常に良かったです。

映画の本筋は、この父と娘の関係のお話で、この父の役を小日向文世が好演していました。悪い役をやらせても、心温まる役をやらせても、ダメな親父をやらせても、なんでもこなす本当に良い役者さんです。今回も難しい役どころを見事に演じていました。

そのクライマックスのシーンを、おにぎりを温める間の時間に詰めたのが素晴らしかったです。この僅かな時間に、少し成長した娘の姿、心配し、娘を気遣う父親の姿、ちょっとだけお互いを理解できた父と娘の姿を詰め込んでいました。映画中ずっと頼りない父親像を見せていたのに、この数十秒だけは最高にかっこいいお父さんとして描くのです。小日向文世の演技あってのシーンですが、このシーンだけで他の不満を帳消しにしても良いと思えるシーンでした。

私はずっと東京の近くに住んでいますので(東京に住んでいるとは言っていない)あまり分からなかったのですが、「東京へ行くか、地元に残るか。」というのは、やっぱり思春期の大きなテーマになるのでしょうか?
そこが理解できれば、もしかしたらもっと違う視点で見られたのかもしれません。
由希と、その友達でダンスを頑張っていた中川武との会話からある程度は感じられましたが、本当のところは分かりません。

ダンスといえば、コンビニの前に溜まってダンスの練習をする男子高生たちかわいかったですね。夜なので音がうるさくならないように、みんなでヘッドフォンして踊るとか、しっかりとあいさつをするとか、ゴミを散らかさないとか、好感の持てる良い高校生たちでした。先入観や偏見で判断してはいけないなと思います。

ところで全然関係ありませんが、コーヒーメロンは本当にコーヒーの味がするのですか?

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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