ペンギン・ハイウェイ

映画「ペンギン・ハイウェイ」 石田祐康

あらすじ(ネタバレなし)

研究熱心な小学四年生の少年・アオヤマ君は、歯科医院のお姉さんに恋心を抱いていた。
ある日、アオヤマ君の住む街に、突然ペンギンの群れが現れる。そのペンギンについての研究をしようと決めたアオヤマ君は、友人たちと協力して謎を解き明かそうとするのだが・・・。

感想(ネタバレなし)

小学生の少年が、年上のお姉さんに恋をする物語。

「犬派か猫派か」と問われたときは、常に「ペンギン派である」と答える私が、「ペンギン・ハイウェイ」を見逃すなんてことはできませんでした。
まず、控えめに言ってペンギンです。
映画のいたるところでペンギンが現れ、よちよち歩くあの愛らしい姿や、パタパタと走るあの抱きしめたくなる姿や、水の中を泳ぐ凛々しい姿を見せてくれます。
ペンギン派にとっては、正に至福の時間となります。

しかし、物語の主題はペンギンにはありません。むしろ少年にあります。

主人公のアオヤマ君(小学4年生)は、生粋の研究者という感じで、大人顔負けの研究や考察をします。
物事を理論立てて考え、合理的な結論を導き出そうとします。そのため、なかなか生意気なところがあります。
生意気理系少年好きにはたまらないキャラクターだと思います。

この小学生が、歯科医院のお姉さんとの関係を築いていき、恋をします。
アオヤマくんとお姉さんの距離感や強い感情が、とても淡く丁寧に描かれてい良かったと思います。

その歯科医院のお姉さんの役を演じたのは、蒼井優(あおいゆう)です。
私は蒼井優という女優がとても好きです。宮崎あおいと出演していた「害虫」という映画で蒼井優の演技に衝撃を受け、それ以来のファンです。

蒼井優の演技は非常に幅広いのですが、声優としての演技もレベルが高いです。
アニメ映画「鉄コン筋クリート」での「シロ」というキャラクターの演技も、非常に印象的でした。
ペンギン・ハイウェイでも、味のあるお姉さんの演技を見せてくれています。

主役級のキャラクターは俳優さんが演じているのですが、その脇を固めるキャラクターたちの声は、実力のある声優さんたちが演じています。
アオヤマ君のお母さんを能登麻美子(のとまみこ)、妹を久野美咲(くのみさき)、クラスメイトのハシモトさんを潘めぐみ(はんめぐみ)、友人のウチダ君を釘宮理恵(くぎみやりえ)が演じています。

釘宮理恵はツンデレ貧乳萌えキャラというイメージが強いですが、私はちゃんとした人間の役を演じているときの釘宮理恵が好きです。
実力のある声優なので、しっかりと演技をしている時の方が好きです。

少し話はそれましたが、演者のレベルは非常に高く、「とりあえず有名俳優使って、へっぽこな演技を披露する」ということはありませんでした。
まあ、西島秀俊(にしじまひでとし)の演技は危うかったですが、あまり出てこなかったのでセーフです。

原作の小説は、森見登美彦(もりみとみひこ)の作品です。
私にとって森見登美彦は地雷です。
「有頂天家族」はすごく好きですが、「四畳半神話大系」と「きつねのはなし」はすごく嫌いです。

有頂天家族2(第2期)のレビューはこちら
https://freshkansou.com/uchouten2

きつねのはなしのレビューはこちら
https://freshkansou.com/kitsunenohanashi

ペンギン・ハイウェイはどうだったかというと、私はすごく好きです。
私が見た(読んだ)どの森見登美彦作品とも異なる作品でした。

森見登美彦は私にとっては好き嫌いの振れ幅が大きくて、見るのにはちょっと勇気がいるのです。
その私の背中を押したのは、「ペンギン」でした。
やはりペンギンは偉大だということです。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。




















アオヤマ君とお姉さんとの関係は、本当に胸キュンでした。

アオヤマ君のお姉さんへの気持ちは恋でした。
お姉さんのアオヤマ君への気持ちは何だったのでしょうか。
恋ではなかったはずです。
でも、「男子小学生はかわいいな」という感情でもありませんでした。
もちろん友情でもありません。
アオヤマ君が大人になったのならば恋に発展するような、そんな曖昧な気持ちだったのではないかと思います。

ペンギンを使って「海」を消滅させれば、お姉さんは消えてしまう。少なくとも、地球にはいられなくなってしまう。
お姉さんが、ペンギンを食べてしまう「ジャバウォック」を生み出してしまったのは、まだ地球にいたいと願ったからです。
そして、お姉さんが地球にいたいと願ったのは、アオヤマ君と離れたくなかったからです。

この二人の関係性が非常に心地よく、そして切なくもありました。

お姉さんは結局地球の生命体ではなかったようです。
地球で暮らしてきた記憶は捏造されたものだったのでしょうか。何のために捏造されたのでしょう。
そもそも、はじめから自分の目的を知っていれば、いろいろ回り道する必要はなかったのです。
なぜ何も知らない状態で地球に来たのでしょう。
そのあたりの説明は、物語の中では全くされません。

アオヤマ君の街に現れた「海」という存在も、結局説明されませんでした。

説明されたのは、「海」という存在は地球にあるべき存在ではなく、その「海」を埋めるためにお姉さんは地球にいるということ。「海」を消滅させるために、お姉さんはペンギンを生み出し、ペンギンを使役できること。
なぜ「ペンギン」なのでしょうか。

完全に説明不足です。この説明不足が森見登美彦作品ということなのでしょうか。
そもそも細かい設定はされてないんじゃないかとも思えるほどの説明不足です。

ですが、

まあ、いいんですよそんなことは。

ペンギン・ハイウェイでの大切なポイントは2つだけです。

1、ペンギンであること(ペンギンは正義)

2、アオヤマ君とお姉さんの関係性が尊いこと

説明不足も設定不足も、大切なポイントが描かれていればある程度無視してしまっても良いと、私は思います。
世界のすべてを描くことはできないのですから。

「海」も「ペンギン」も、研究者肌のアオヤマ君とお姉さんを結びつける舞台装置でしかなかったのかもしれません。
それでもいいのです。

「海」も「ペンギン」も消え、お姉さんもいなくなってしまった後、アオヤマ君はますます研究に熱を入れていくことになります。
もっともっと賢くなり、「海」の謎を解明し、再びお姉さんに会うためです。
アオヤマ君はもうひと回り成長し、そして大きな目標を持ったのです。
これは「恋」の力であり、人が人を惹きつける力です。

大切なポイントはこの2つだったのですが、それとは他に、私はクラスメイトのハマモトさんが大好きでした。

ハマモトさんも研究者肌で、同じ研究者肌だったアオヤマ君に好意を抱いていました。
そのハマモトさんが、歯科医院のお姉さんにライバル心をむき出しにするところがかわいかったです。
大人の女性に本気で立ち向かう女子小学生、とってもかわいかったです。

最後におっぱいの話を書きます。
アオヤマ君は、おっぱいに対する研究にも非常に熱心でした。合理的におっぱいの良さを研究していたのです。
「怒りそうになったときはおっぱいのことを考えれば落ち着く」とか「おっぱいが世界を平和にする」とか、よくわかっているなと思いました。
お姉さんも言っていましたが、アオヤマ君は実に「将来有望」だと思います。




ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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