終戦のエンペラー

映画「終戦のエンペラー」 ピーター・ウェーバー

あらすじ(ネタバレなし)

1945年、GHQ最高司令官マッカーサーが日本に上陸し、アメリカによる日本統治が始まる。マッカーサーの部下である知日家のボナー・フェラーズ准将は、天皇に戦争責任があるかどうかの調査を命じられる。マッカーサーは戦後の日本で天皇を処刑すべきではないと考えており、その裏付けをフェラーズに命じたものだった。フェラーズは西欧の価値観とは全く違う文化の中で、戦後日本の行末を決定づける判断に迫られる。

感想(ネタバレなし)

「これをアメリカで作ったのか。」と思いました。良くも悪くも驚いた作品でした。

「日本を過剰に美化している」ということで、アメリカではあまりヒットしなかったそうです。確かに「被害者」としての日本の描写が多く、特に天皇に関しては、これでもかというくらい「平和を愛する良い人」という形で描かれていました。だからこそ、この映画をアメリカで作ったということに大きな驚きを感じました。「原爆の投下によって、結果的には多くの人の命を救った。」と、未だに本気で信じている人がいるアメリカで、これだけ日本贔屓の戦争映画が作られるのかと思いました。

映画は、基本的には資料や歴史に則って作られています。主に天皇の処遇についてがテーマになっていますが、終戦直後の日本の様子を知るひとつの材料となる映画です。ですが先程も書きましたが、「日本贔屓」なので、この映画だけで判断するのは危険です。
映画はそれに加えて、フェラーズが想いを寄せていた日本人女性との交流も描かれています。フェラーズの人柄を描き、物語に彩りを添える演出ですが、正直無くても良かったのではないかと思いました。取ってつけたような中途半端感がありました。

その日本人女性・島田あやを演じたのは初音映莉子でした。
初音映莉子
大変失礼ではありますが、「久しぶりに初音映莉子見た!」と思いました。永谷園のCMとか、映画「うずまき」(うずまきは酷い映画だった・・・)とかに出演していて結構好きな女優さんだったのですが、最近トンと見かけないなと思っていました。素敵な大人の女性に変わっていました。

主役のフェラーズを演じたのは、アメリカの大ヒットドラマ「LOST」で主役を演じていたマシュー・フォックスです。懐かしい。
マシュー・フォックス
マシュー・フォックスの演技は「LOST」の時のジャック・シェパードとほとんど変わりません。つまりイマイチだったということです。終戦のエンペラーは、脇役に良い役者が多かったです。
マッカーサーはトミー・リー・ジョーンズですし、日本の俳優さんは、伊武雅刀、西田敏行、桃井かおり、夏八木勲と、素晴らしい演技をする役者たちが揃っています。特に、宮内次官の関屋貞三郎を演じた夏八木勲の演技が素晴らしかったです。

セットが少し作り物っぽかったり、最初の飛行機のCGが酷かったりと、映像的には見ていて不安になるようなシーンが結構ありました。特に飛行機のCGは酷くて、「よくこれでOK出たな。」と思いました。ですが、ストーリー全体としては楽しめました。歴史と政治の話がメインになりますが、それ程堅苦しくせずに、程良い緊張感を持って見られました。私の希望としましてはもう少し堅苦しいのが好みではありますが、映画としては程良いバランスだったように思います。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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アメリカ映画は「俺たちが正義!」「アメリカ強ぇ!」っていう映画ばかりな気がするので(酷い偏見)、本当に驚きました。

「帝国の拡大に伴い、残虐行為が繰り返された。侵略に征服に大量殺戮」と日本を批判するフェラーズに対して、開戦直前に総理大臣を務めた近衛文麿は以下のように答えます。
「あなた方は日本の2つの都市を焼き払った。日米双方が有罪だ。」
「日本は中国やマレーシアやシンガポールやフィリピンを奪ったが、それは欧米から奪ったのだ。」

もちろん戦争をしたことに対して決して正当化はできませんが、この意見に対しては私も全くの同意見です。日本が戦争に対する責任を負わなければならないのは当然ですが、元々アジアを植民地支配していた欧米諸国も等しく責任を負うべきだというのは、極めて合理的な理論であると思います。

しかし、どれ程合理的であったとしても、この意見を受け入れられるアメリカ国民は少ないでしょう。だから驚いたのです。「アメリカの映画で登場キャラクターにこんなことを言わせるのか!」と。結局はアメリカではあまりヒットしなかったということで、そこは少し残念に思います。戦勝国と言えども、しっかりと直視して考えてほしいです。

まあ、蓋を開けてみれば(あとで調べてみたら)、元々映画の企画をしたのは日本人だったんですね。制作にも日本人が結構絡んでいるのですね。まあそうですよね。

ストーリーは史実が元になっていますので、基本的には歴史の授業で聞いた内容そのままです。ただし、戦後の天皇の処遇に焦点を当てて、かなり詳しく描かれています。フェラーズとマッカーサーとの間の駆け引きや、皇居に入ることを許されなかったアメリカ軍がどのように天皇側と交渉をしていったかなど、非常に興味深かったです。まあ、本当に細かい部分はフィクションや憶測も多く含まれているでしょうけどね。

ちなみに、日本史の授業で寝てばかりいた私は、日本の降伏を阻止しようとした将校たちが皇居を占拠した事件「宮城事件」の存在を知りませんでした。そんなヤバイ事件があったのかよと驚きました。学生時代に歴史の勉強をサボっていた人にとっては、知識も増えて良いですよ!

もうひとつ興味深かったのは、日本人独特の価値観をアメリカの視聴者にもわかりやすく伝えようとしている部分でした。「建前と本音」や「武士道精神」などが英語で説明されていたのは面白かったです。私は日本人なので、「それなー」とか「そうだよねー」とか思いながら見ていたのですが、あの説明でアメリカ人にはどれくらい伝わったのか、かなり興味があります。

フェラーズは、開戦の意思決定に対する天皇のスタンスを知りたくて、宮内次官の関屋貞三郎に対して「開戦直前の陛下の気持ちが反映された文書が見たい。」と言います。それに対して関屋は答えます。「陛下は短歌を読まれた。」と。その短歌の内容が「平和を望むのに、なかなかうまく行かない」というもので、これをもって天皇は開戦には強く反対していたとうかがえるということです。
日本人にとっては「ああ、そうだね!」っていう内容ですが、自己主張をする欧米の方々からすると「なんでNO!ってはっきり言わないの!!!」と思うわけです。こういう細かいところはちゃんと伝わっているのか、かなり興味があります。

こういった日本人の描き方や説明にしても、歴史を見る視点も、非常にアメリカっぽくない映画でした。良い意味で「普通じゃない」映画でした。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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