rio

小説「リオ―警視庁強行犯係・樋口顕」 今野敏




あらすじ(ネタバレなし)

とある殺人事件で目撃された美しい女子高生。別の場所で起きた殺人事件でも目撃され、事件は連続殺人の様相を帯びていく。捜査本部に配属された樋口警部補は、娘と同じ年頃の少女が容疑者となっていくことに戸惑いながら、事件の真相へと迫っていく。

感想(ネタバレなし)

前回の「ノエル」と同様に、完全にタイトルだけを見て買ってきました。またしても「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」です、はい。感想としては、いわゆる刑事もので、エンターテインメントとしてとてもワクワクしながら読めましたが、強い印象が残ることはありませんでした。3ヶ月後には内容を忘れてそうです。
好感が持てたことを2点だけ書いておきます。
一つ目は、話の流れがとても現実的でリアルな感じがした点です。警察の捜査は地道で、探偵然とした刑事が突飛なトリックを解き明かすようなことはありません。
二つ目は、キャラクターの心情をしっかりと描いている点です。刑事ものは事件の流れやトリックの解明なんかがメインになりがちですが、捜査員の心情がしっかりと描かれていたのが印象的でした。特に主人公は自分に似ている所がいくつかあって、共感しながら読めました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの小説を読んでいない方はご注意ください。


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能力はあるのに、自分に自身が持てないために、周りからの評価の高さに戸惑う樋口警部補かわいいです。
周りからどう見られているかを気にするあまり、いつも一歩引いてしまう感じは共感しました。刑事ものの主人公としては珍しいタイプの主人公だと思いました。世代論に固執している辺りは、あまり共感できませんでした。

「リオ」には世代に関することが多く出てきました。容疑者にされたリオは、女子高生の援助交際や売春なんかでメディアに祭り上げられた世代として、主人公の上司は団塊の世代で、学生運動なんかに参加していた世代として、主人公はその数年後の、全共闘運動には乗り遅れ、その後始末をさせられた世代として、「こういう世代だからこういう考え方をする」というようなものが多かったです。この多くは主人公の樋口が考えている内容なのですが、ちょっとそこに注目し過ぎじゃないかなと思いました。

ミステリーを期待していると肩透かしを食らうようなストーリー展開です。
散々計画的犯行のように捜査が進んでおきながら、最後は行き当たりばったりな犯行ですから。犯行の動機はどうでしょう、弱すぎると思う人も多いかもしれません。私は十分な動機だと思いました。リオを救うことで、自分を救おうとしていた。同じ「アダルト・チルドレン」という境遇に救いの手を差し伸べることで、自分の中の後ろめたさに正当性を持たせようとした。それで殺人まで犯すのかと言われれば、これはちょっと意見の分かれる所だと思います。

それにしても、自分の生徒を部屋に寝泊まりさせちゃう犯人の高校教師といい、あの手この手で女子高生とセックスしようとする被害者のおっさんたちといい、なんだかんだで最後にはリオに惚れ込んじゃう樋口警部補といい、この小説に登場するおっさんたちはどうしようもない。リオはもの凄い美人(しかもJK)だということなので、私も間違いなくそのどうしようもないおっさんの仲間入りをすることでしょう。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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