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映画「わたしを離さないで」 マーク・ロマネク




あらすじ(ネタバレなし)

「1950年代、不治の病と言われた病気を治療する画期的な技術が生み出され、1970年代には平均寿命が100歳を超える。」という世界に生きる、3人の少年少女の物語。この少年少女たちは特別な学校で暮らし、喫茶店での店員さんとお客さんの役を演じる授業を受けたり、健康に対する特別な注意を心がけさせられたりと、少し変わった教育を受けている。しかし、彼らにはこのあと、過酷な運命が待っていた。

感想(ネタバレなし)

テーマは命や尊厳に関することで、かなりヘビーな内容なのですが、映画自体は穏やかに流れていきます。田舎の風景や、大げさに描かない感情表現、緩やかに映し出される日常風景など、静かな世界観を作り上げています。
ストーリーは結構激しくて、驚きのシーンとか何度かあるのですが、それすらも独特の世界観の中に包み込まれて、自然と流れていきます。
主演のキャリー・マリガンがとてもかわいらしかったです。その親友の役を演じたキーラ・ナイトレイは、クセのあるキャラクターを演じきっていました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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ネタバレなしでこの映画の魅力を伝えることは難しくて、ウズウズしていました。
まず、画期的な医療技術ですが、クローンからの臓器移植です。そして主人公たちは、そのクローンです。自分のオリジナルを生かすために作られた、臓器提供者です。「私の中のあなた」にテーマは似ていますが、もっと悲壮的で破滅的な雰囲気が漂います。
この時点で命や尊厳、魂などをテーマにしていてかなりボリュームがあるのですが、ここに主人公たち3人の友情や愛情が描かれています。
「トミー!おまえがはっきりしろよ!」っていう、ラブコメの主人公みたいな態度をとる男と、一歩引いて自分の感情を隠そうとする女の子と、その子の感情を知っていてグイグイ攻めていく女の子と・・・・と書いていて、「ラノベかよ。」と思いましたが、もっとちゃんとした感情の変化が描かれています。ご都合主義のハーレムラノベとは違いました。ちゃんとひとりひとりの気持ちと行動に納得ができる内容です。

謎なのは、このクローンたちはある程度の自由を許されていながら、「逃亡」や「自殺」を図らなかったことです。このまま生きていたら、必ず若いうちに臓器を提供して死んでしまうのに、ただその運命を受け入れていくことに納得ができませんでした。小さいうちからそういった対策のための倫理教育をかなり施されてはいるのだろうけれども、それでもかなりの人数が(運営としてリスクと認識されるくらいには)逃亡していそうに思えます。
主人公の友人のルースが、自分のオリジナルかもしれない人物を見に行ったときの動揺ぶりからして、クローンの心理的調整は難しかったのではないかと推測されました。今回はそういったシステムに関してはメインではなく、少年と少女の繋がりが軸ですので問題ではありませんが。

主人公たちの運命があまりに理不尽で、「こんなのおかしいよ!ふざけんな!」って思っていたのですが、運命を粛々と受け止めていく主人公が最後に言っていた、「臓器提供者とオリジナルに何の違いがあるのだろうか。人は必ず終わりを迎える。生というものを理解できずに。」という主旨のセリフでいろいろ納得しました。あと、このセリフは結構こたえました。

静かな世界観の中に、命をテーマにした問題提起。不思議な作品でした。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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