マネー・ショート 華麗なる大逆転

映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」 アダム・マッケイ

あらすじ(ネタバレなし)

住宅ローンの債権が好調だったアメリカ合衆国。その後、リーマン・ショックにもつながるサブプライム住宅ローン危機を、いち早く予見した投資家たちがいた。彼らの視点から当時の金融業界を見つめ、その歪みを発見していく金融系エンターテイメント映画。

感想(ネタバレなし)

リーマン・ショックの内実や金融業界の腐敗を、テンポの良いエンターテイメントという形にして暴き出していました。

「株って安い時に買って、値が上がったら売ると儲かるんでしょ?」っていうレベルの金融素人の私が見ましたが、ほとんど問題なく見れました。テンポが良くてポンポンとストーリーが進んでいくのですが、金融知識が乏しくてもストーリーにはついていけます。所々理解できないところもあったのですが、ジェンガやコックやブラックジャックなど、身近なもので例えながら説明を加えてくれていて、素人に親切な作りになっています。

「リーマン・ショック」や「サブプライムローン」なんていう言葉は知っていますが、「これが原因で世界的に不況になった、全くもって迷惑な話」程度の認識でした。映画では、銀行や銀行関係の企業が、当時どれだけ悪どいことをやっていたのかを暴いていきます。「金融商品」というものが虚構の上に成り立っているのはなんとなく認識していますが、「これ程までにか!」と驚くこと間違いなしです。

つい最近、宮部みゆきの「火車」を読んで、金融の怖さを思い知ったばかりです。(火車の感想はこちら
火車は消費者金融のような、個人レベルのお話でしたが(個人レベルのことも大事です!)、マネー・ショートは世界経済のお話で、規模も金額も桁違いでした。1億ドルとか10億ドルとかっていう金額が当然のように出てきて、なんだか頭がクルクルしてしまいました。

そんな世界規模の経済のお話ですが、何組かの投資家を主軸に描かれていて、その人物たちのヒューマン・ドラマとしても見ることができます。多くの失業者や死者を出すことになるであろう事件を予見して、その中で大金を動かしていく人物の苦悩なんかも描かれていて、なかなか哀愁が漂っていました。

そんな登場人物の中で最も強烈だったのは、マーク・バウムというキャラクターです。このマーク・バウムを演じたスティーヴ・カレルという俳優が最高でした。マイペースで空気が読めないながらも、不正や曲がったことが大嫌いで、強い言葉(汚い言葉)をバシバシ使って糾弾していく痛快さがあって、それでいて実は心の奥底に弱いところも持っていたりする難しいキャラクターを、見事に表現していました。他のどの俳優をも食ってしまった、素晴らしい演技でした。唯一対抗できていたのはブラッド・ピットくらいです。

全然関係ありませんが、エンドロールで「Marisa Tomei」という名を見つけました。「魔理沙か!」ってなりました!何を言っているのか分からない方は気にしないでください。

さて、私のような金融素人でもマネー・ショートを楽しむことはできますが、やはり知識が多いほうが映画を楽しめると思います。多少の予習をしておくことをお勧めします。
タイトルのマネー・ショート(原題はThe Big Short)」の「ショート」は、日本語では「空売り」と呼ばれるものです。私は「空売り」という言葉は知っていましたが、何のことだかはサッパリ知りませんでした。映画の中では「空売り」の説明はありません。ただ、「証券の価格が下がると得をする」という説明があり、実際それだけ理解できればストーリーにはついていけます。
映画を見た帰りにちょっと調べたところ、空売りとは、証券会社から借りた株を売って、その株を後でもう一度買い戻して証券会社に返すことだそうです。
「500円の株を借りて、それを売って、値が下がって400円になったときに買い戻して返せば、100円得をする」というようなシステムみたいです。(超ザックリな説明)
だから、逆に値が上がってしまうと損をしてしまうのですね。

サブプライム・ローンに関するお話もたくさん出てきました。そもそも、「なぜ住宅ローンが証券になるのか」という部分を私は全く理解していません。「ローンが証券になる」とか、これだけで怪しげな金融商品としか思えないのですが、当時アメリカでは信用度も利回りも高い人気商品だったのだとか。この住宅ローンの証券を「MBS」とか「モーゲージ」とかと呼ぶらしく、政府系の機関がこのMBSを扱っているので、信頼度が高いのだそうです。当時住宅価格は上がっていて、住宅ローンを組んだ人がローンを返せなくなっても、家を抵当に入れれば問題ないという認識もあったようです。

この「MBS」の他にも「CDS」とか「CDO」とか「合成CDO」とか、もはや「押尾学がやっていたクスリの名前か!」っていうような金融商品まで登場して、素人の私にはお手上げです。ただ、「押尾学がやっていたクスリ」のように胡散臭いものだということは、映画を見ていればわかりますし、実際それくらいの理解でストーリーは追えます。「もっともっと理解したい!」という人は予習しておくと良いと思います。逆に、私のように映画を見た後に興味を持って調べたりするのも楽しいと思いますよ!

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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株や金融商品っていうのは、素人がおいそれと手を出してはいけないのだなと思ったりしました。銀行が腐ったことをやっていれば、私たち素人はなんの予防もなく騙されて破産してしまうなって。
特に印象的だったのは、マーク・バウムが、格付けをする会社に話を聞きにいくシーンです。株や国債なんかに「AAA」とか「B」とかっていう格付けをする会社です。格付けが高ければ投資家は安心して買えて、安心して買える分人気もあるので、利回りは悪くなる。というように、投資全体に影響するような大切な格付けです。にも関わらず、住宅ローンの証券に対する格付けを、ほぼ審査なしで「AAA」とか格付けしていたことが明らかになります。「うちで低い格付けをすれば、銀行は他の格付け会社に持っていく。うちも顧客(銀行)を失いたくない。」ですって!
これは投資家を欺く行為ですし、投資家はこんな格付け会社に頼ってお金を動かしていたことになります。

これはどう見ても詐欺です。しかも投資家側は、それが詐欺だとは気づけない。全くもって正気の沙汰とは思えません。金融業界ではこういったことがどの程度の頻度で行われているのか、素人の私には想像もつかないのですが、これでは怖くて怖くて到底手を出そうとは思えません。(手を出すお金も持っていませんが)

サブプライム住宅ローン危機を題材にしていますので、金融業界の汚い部分ばかりを描いているのは確かでしょう。そっち側に偏っているということを念頭に置いて見ていましたが、それにしてもやっぱり悪かったです。銀行悪かったです。

金融のことに関しては、実際に起こった出来事ですので、ネタバレも何もないですね。なので、それぞれのキャラクターのことを書こうと思います。

投資家側のキャラクターたちは、基本的に「職人」という感じのキャラクターが多かったです。市場を分析して、自分たちの顧客に最大限の利益を提供するっていう感じの。唯一「自分たちの金儲けのため」というふうに描かれていたのは、大きな銀行には取り合ってももらえない弱小投資家の2人組です。彼らは小さな会社経営からのし上がってきていて、住宅ローンの焦げ付きを予測して、これを機に大儲けしてもっと上へ行こうという野心を持って行動していきます。しかし彼らは、ブラッド・ピット演じるベンに言われます。「おまえたちが勝つということは、多くの労働者たちが大変なことになるということだ。失業者も死者も多くでるだろう。」と・・・。それを聞いて、彼らも自分たちのやっていることの意味に気づいて考えます。

他のキャラクターたちは言われずともそのことを自覚していて、だから「ただの金儲け」というふうには思っていませんでした。特にマーク・バウムは、銀行なんかを相手にバンバン言いたい放題言います。正に「歯に衣着せぬ」っていうやつです。彼の行動は非常に痛快ですし、テンポも良くて楽しかったです。
こういった「ただの金儲けではない」という感じのキャラクターの動き方に共感できて、だからこそヒューマン・ドラマとしての味も出ていました。

マーク・バウムは、「自分たちのやっていることは銀行と同じではないだろうか。」と最後まで悩み、決断に苦しみました。頭がおかしいんじゃないかと周りに思われていたマイケル・バーリも、金融の混乱の結果会社を急成長させ、自らも大きな利益をあげますが、その後金融業界から手を引いてしまいます。どちらも凄く粋なキャラクターでした。

ということで、金融の勉強にもなりましたし(勉強をするキッカケになりましたし)、エンターテイメントとしても大変楽しめました。130分と、少し長めの映画だったのですが、最初から最後まで退屈することなく、あっという間に終わってしまったというふうに感じました。

ひとつだけ文句を言わせてもらうと、映画の中のキャラクターが、ときどきカメラを通して私たちに語りかけてくる演出が非常にウザかったです。こっちに向かって話しかけるたびに「こっち見んな!」ってなりました(´・ω・`)

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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