有頂天家族

アニメ「有頂天家族2(第2期)」




あらすじ(ネタバレなし)

京都には、人に化けた狸と天狗が暮らしていた。そして狸は「金曜倶楽部」という秘密結社に狙われる。金曜倶楽部には、忘年会には狸鍋を食べるという伝統があったから。主人公の狸・下鴨矢三郎(しもがもやさぶろう)の父も、金曜倶楽部の餌食になっていた。
矢三郎は、大天狗の一人である赤玉先生のお世話をしていたのだが、ある日、姿を消していた赤玉先生の弟子・二代目(にだいめ)が京都に帰ってきた。二代目は赤玉先生との喧嘩の末に破れ、姿を消していたのだ。それぞれの思惑が絡まり合い、物語は思わぬ方向へと進んでいく。

感想(ネタバレなし)

家族愛から恋へとテーマが変わっていく。

1期でのテーマは完全に「家族愛」でした。ですが、2期でのテーマは「恋」です。恋愛です。
世界観や物語の空気は変わっていません。家族の愛情を感じて温かくなるか、男女の愛情を感じてキュンとなるか。テーマも変わっているようで変わっていない。1期が好きだった人は、変わらず2期も好きになるでしょう。

1期と同様、狸界の覇権争いや家族の交流を描いているのに加え、天狗のケンカや登場人物たちの成長と自立、それぞれの恋路なども描かれていて、1期以上に「てんこ盛り」という内容です。
相変わらずのドタバタ騒動っぷりを楽しめますが、それでいてキャラクターたちの心理が丁寧に描かれていて、「ドタバタ」と「繊細」が上手に共存しています。
「ドタバタ喜劇」と思って適当に見ていると、キャラクターの心理を読み取れずに置いてけぼりを食うことになります。

エンターテインメント性をしっかりと楽しみながら、それでも真剣に物語に向き合いながら見る。
そうすれば、きっと有頂天家族を好きになるでしょう。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのアニメを見ていない方はご注意ください。


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大きなストーリーとしては、赤玉先生と弁天様陣営VS二代目の天狗のケンカと、狸界の頭領である「偽右衛門」の地位を巡る下鴨家VS夷川家の戦いの2本立てというところでしょうか。
それでいて物語全体のテーマは「恋」という、全然違う要素になっているから、複雑で面白いです。
いろいろな陣営のいろいろな思惑も絡まって、物語はてんやわんやのカオス的騒動となっていきますが、そこが有頂天家族の面白いところであり、醍醐味ですね。

まずは偽右衛門を巡る下鴨家と夷川家についてを書こうと思います。

1期での騒動で姿を消していた、夷川家の頭領・夷川早雲(えびすがわそううん)。早雲と折り合いが悪く、京都から出ていった長男の呉一郎(くれいちろう)。
早雲が京都からいなくなったため、呉一郎は京都に戻ってきます。そして、下鴨家の長男・下鴨矢一郎(しもがもやいちろう)と「これからは仲良くやっていこう」と提案し、矢一郎の偽右衛門就任を後押ししてくれます。

そんな折、カエルに化けて井戸に引きこもっていた下鴨家の次男・矢二郎(やじろう)は、京都を出ることを決意します。そして四国へ向かうのですが、ここで衝撃の事実を知ることになります。
そこには本物の呉一郎がいたのです。

実は京都にいた呉一郎は、早雲が化けていたのでした!なんという展開か・・・。
偽呉一郎の早雲は、偽右衛門就任を決める土壇場で策略を巡らせ、自らが偽右衛門になろうとしていたのでした!なんという悪どさ!!

夷川早雲というキャラクターは、物凄く意地汚い狸として描かれていました。それでも過去に夷川家と下鴨家の確執をなんとかしようと思ったこともあるようですし、子に対する愛情もしっかりと持っています。
意地汚さばかりが目立つ演出でしたが、しっかりと人間臭さ(狸臭さ?)も描かれていて面白いです。
敵役を、単なる悪者として描かないところが良いです。

そして、天狗のケンカについて。
天狗のケンカと狸の争いは、クライマックスでは同時に進行するので、最終話はカオスの極みでした。
ここからは必然的に、2期のメインテーマである「恋」についても書いていくことになります。

赤玉先生と二代目は、100年前に、とある女性を巡ってケンカをしたようです。
赤玉先生が「恋にうつつを抜かすなどけしからん。」というような発言をしていたことから、二代目が修行中に恋にうつつを抜かしていたことがケンカの原因なようです。

このケンカで敗北した二代目は、追い打ちをかけられるように、その女性にフラれてしまいます。まさに泣きっ面に蜂ってやつです。
そして、赤玉先生の前から姿を消します。

京都に戻ってきた二代目は、弁天様に出会います。弁天様は、二代目がかつて恋をしたその女性にそっくりでした。
「好き」と「憎い」は紙一重。二代目は弁天様に対して「憎しみ」をあらわにします。

対して弁天様も二代目に対して「憎しみ」を持つようになるのですが、この辺りの心理に関しては非常に微妙です。
確かにお互いが憎しみ合っているという描写なのですが、その裏で惹かれ合っているという解釈もできました。

弁天様は二度も二代目に破れてしまうことになるのですが、その二度目のケンカは印象的でした。
始めはスタイリッシュな技を使いながら戦闘をしているのですが、終盤は掴み合ったり噛み付いたりと、「醜さ」を丸出しにした「本気」のケンカになっていきます。
ここに「本気」を読み取れます。

「愛」と「憎しみ」は裏表なので、この「本気」はどちらにも取れます。
結論としては、二代目は弁天様の背後に「過去にフラれたあの女性」を見ていましたし、弁天様もそのことに気がついていましたので「憎しみ」だったのでしょう。ですが、ただ「憎しみ」と表現してしまえるほど単純な感情ではないでしょう。
私の語彙力が足りなくて、これ以上正確な言葉で表現することができません。こういったキャラクターの微妙な心理が繊細に描かれていて、非常に良かったです。

さて、二度目の戦いに勝利した二代目ですが、地上に降り立った後に泣きます。
自らが発した炎で家は燃えてしまい、集めたお洒落な家具もすべて燃えてしまいます。
弁天様との戦いで身も服もボロボロ。着飾ったものがすべて剥がれてしまい、ありのままの自分を晒し、昔から何も成長していなかったことに気がつきます。狸ではありませんが、化けの皮が剥がれたのです。

その二代目に向かって、赤玉先生は「強くなれ」と言います。赤玉先生も弁天様も、バトルという力比べでは二代目に負けましたが、本当の意味での「強さ」では、赤玉先生は負けていませんでした。
それを踏まえての「強くなれ」でしょう。

物語中では、散々バトルにおいての「強さ」が強調されてきましたが、物語の最後で、人としての(天狗としての?)「強さ」が強調されます。
ちょっとボーっとしながら見ているとこういったテーマの変化に気づけないので、本当に気が抜けません。集中して見なければ!

赤玉先生と弁天様と二代目の恋模様(憎しみ模様?)は今後どうなっていくのか、全く想像ができませんし、楽しみなところでもあります。

実際、弁天様の恋心はどこを向いているのでしょうか。本当に読めないキャラクターです。
あれだけ「憎しみ」を持っていた二代目に対しても「恋心」のようなものを感じましたし、矢三郎に対しても「食べちゃいたいくらい好きだ」(本当の意味で食べてしまうつもりですが)と言っています。
本当に読めないキャラクターです。

ここで、満を持して海星ちゃんの話を書きましょう!夷川早雲の娘・海星ちゃんのことです!ああ!海星ちゃんかわいい!!

海星ちゃんと矢三郎は許嫁です。親の間で、将来結婚することを決められていました。
しかし、矢三郎はそんな気は全然ないようです。いや、なかったようです。
それもそのはず、海星ちゃんは矢三郎の前に全く姿を現さないのです。

しかし、姿を現さないのには理由がありました。
海星ちゃんが矢三郎の前に姿を現すと、矢三郎は化けの皮が剥がれ、狸の姿に戻ってしまうのでした。
それがもとで、矢三郎は海星ちゃんの兄である金閣と銀閣にバカにされたことがありました。
以来、海星ちゃんは罪の意識を感じ、大好きな矢三郎の前に姿を現さなくなったのでした。

一人で悩み、考え、我慢をしてきた海星ちゃんの気持ちを知り、矢三郎の心は動きます。
そして、矢三郎は海星ちゃんの前で(背中合わせになって話していたので「後ろ」になるのか?)「将来夫婦になる」と発言します。

このシーンは胸がキュンキュンするシーンです。矢三郎が狸の姿に戻らないよう、背中合わせで話をするのですが、その海星ちゃんの優しさたるやもう素敵すぎです。
そもそも、矢三郎は海星ちゃんの魅力に気づくのが遅すぎです。海星ちゃん素敵じゃないですか!!可愛いじゃないですか!!爆発しろ!!!

さて、その矢三郎ですが、弁天様に対する淡い恋心も捨てきれません。
二代目に負けて引きこもっている弁天様のところへ赴き、矢三郎は思います。
「自分は狸だから」
「弁天様の相手は狸であってはならない」

弁天様の本当の気持ちがわからないので真相はわからないのですが、この矢三郎の考えは見当外れのようにも思えます。
「狸だからダメ」ということはないように思えます。

しかし矢三郎、海星ちゃんという素敵な女の子(狸?)がいながら、そんな浮気めいたことをしたら許さん。絶対に許さん!!

その他にも、矢三郎の両親の出会いから結婚までのエピソードが入っていたり、矢三郎の兄・矢一郎と南禅寺玉蘭(なんぜんじぎょくらん)との恋愛から結婚までのエピソードが入っていたりと、「恋」に関しては大変胸キュンな物語でした。
真面目すぎてガチガチになってしまう矢一郎も、いざとなると威勢のよい大胆な言動をする玉蘭も、どちらも本当に可愛かったです。

書いても書いても書ききれないほどに、細かいところに色々な要素が詰まった作品でした。
キリがないので、メインの部分を語り終えたところでやめておこうと思います。

どうやら三部作のようですので、続きも楽しみです!

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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