あらすじ(ネタバレなし)
何か悪い出来事がことが起こる時、時間が巻き戻る。その悪い出来事の原因が取り除かれるまで時間はくり返し巻き戻る。そんな「リバイバル」と呼ばれる能力を持つ漫画家志望の藤沼悟。ある日、悟の母親が自宅で何者かに刺されて殺されてしまう。悟は容疑者として警察に追われるが、そこでリバイバルが起こり、なんと小学生の時へと戻ってしまう。
この事件は、悟が小学生の時に起こった連続誘拐殺人事件ともつながっているはずだと思い、悟は過去を変えることで未来を変えようと試みる。
感想(ネタバレなし)
あらすじとしてはシュタインズ・ゲートっぽいですが(アニメ「シュタインズ・ゲート」の感想はこちら)、設定としては映画「バタフライ・エフェクト」に近い感じがします。
バタフライ・エフェクトはポップでテンポの速いストーリー展開と、少し切ないラストで人気の高い映画です。私はそのポップすぎる展開が「適当」と感じ、切ないラストにも納得がいかず、バタフライ・エフェクトは苦手です(あまのじゃく)。ですので、「バタフライ・エフェクト的なラストを迎えたら絶対に許さない!」と、常々口にしていました。シリーズ通して非常に面白く、ずっとワクワクしながら見続けていたので尚更「バタフライ・エフェクト的なラストを迎えたら絶対に許さない!!!!!!!」と思っていました。
結論から言うと(ネタバレはまだしない)、非常に好感の持てるラストでした。それでいてキャラクターの心情の奥の方まで描けていて、ハリウッドの「わかりやすいね!」っていうタイプのショッパイ映画とは違いました。中盤から後半の盛り上がりに比べるとややラストが弱い感じもしますが、それはストーリの秀逸さのためにラストへの期待値が高かったということです。もっと強いインパクトのあるラストだったならば、名作にもなりえたと思います。
「僕だけがいない街」を語る上で絶対に外せないのは、「バカなの?」というセリフです。主人公である藤沼悟が小学生のとき起こった連続誘拐殺人事件の被害者のひとり・雛月加代(ひなづきかよ)のキメ台詞(?)です。雛月加代の声を担当したのは悠木碧でした。同じ「バカなの?」というセリフを、状況や心情で演じ分けた悠木碧が非常に良かったです。特に、嬉しくて嬉しく泣きそうな時に放った「バカなの?」は最高の演技でした。
「バカ」という言葉は、海外のアニメファンが最初に覚える日本語の筆頭だそうです。「バカ」という言葉は攻撃的な言葉ですし、「バ」の音も「カ」の音も強い音ですので、ちょっと怖くてあまり好きな言葉ではありませんでした。「バカ」より「アホ」の方が優しい気がします。
ですが、アニメを見ているといろいろなタイプの「バカ」という言葉に出会い、印象は変わりました。「バカ」とう一言に含むことのできる感情の多彩さに驚かされました。今となっては、(生ごみを見るような目つきで)「バカ」って言ってもらいたいくらいです。
タイムリープという難しいテーマではありましたが、ストーリー全体を通して楽しめました。毎話終わるごとに、続きが気になって気になって仕方がありませんでした。「タイムリープ」や「ミステリー」というテーマだけでなく、「仲間」や「信頼」もテーマになっています。友情モノには滅法弱い私ですので、それはもうウルウルしたものです!
感想(ネタバレあり)
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私は、藤沼悟の母・藤沼佐知子(ふじぬまさちこ)が大好きでした。自分の子供を愛し、認め、信頼する姿は、本当に頼もしく映りました。鋭い洞察力で悟の考えを見抜き、悟には人の心を読む「妖怪」と思われていましたが、これは「妖怪」ではなくて「愛情」だと思いました。普段からずっと悟のことを見て、考えて、その結果としての「妖怪」です。最高のタイミングでピシャリと悟の考えていることを言い当てるシーンはコミカルで面白かったですし、同時に佐知子の息子に対する愛情を感じ取れる優しいシーンでもありました。
そんな佐知子が刺殺されてしまったわけですから、私としてはテンヤワンヤですよ!悟、頑張れよ!母を救えよ!!
わりとガチ目に応援していました。
これは終盤の話ですが、連続誘拐殺人事件と(未来の)藤沼佐知子殺しの真犯人である八代学(やしろがく)によって悟が川に沈められ、15年間ずっと眠ったままになった時の佐知子の献身ぶりには涙涙でした。
短いカットがパッパッと映されるだけの15年間の過程でしたが、毎日悟のために働き、毎日悟のために世話をし、悟のために15年間を生きてきたんだなと思わされました。親子モノには滅法弱い私ですので、それはもうウルウルしたものです!
母の話ばかり書いたうえに、真犯人の名前をサラッと出してしまいました。中盤くらいまでは「犯人が誰だかわからない。」という謎解きミステリー的な要素も含んでいましたが、途中からはもうバレバレの演出をしていました。逆にそのバレバレを楽しんでいるかのような演出もありました。
バレバレになってからは、「悟、気づけ!そいつが犯人だぞ!おい!何やってるんだ!」と、散々悟の行動にケチをつけたものです。そして何よりも、なぜ八代学は連続誘拐殺人事件を企てたのかということが気になりました。
八代学のポリシーは「心の空白を埋める」でした。八代の心の中の空白が何なのかはわかりませんでしたが、八代にとってその心の空白を埋める手段が殺人であったようです。また、悟が植物状態で眠っている間、八代はずっと悟を観察していたようで、そういったことでも心の空白を埋めていたようです。
正直言って、コイツはヤバいヤツですよ!頭のおかしいヤツですよ!!頭がおかしいのに頭が良いから、なお厄介ですよ!!
最後、病院の屋上から飛び降りようとする悟を、八代は止めます。最早、悟という心の空白を埋める存在がなければ自分は生きていけないと悟った八代は(←やっぱり危ないヤツだ!)、悟を落とし、自分も飛び降りようとします。下には仲間たちがいて、飛び降りても大丈夫なようなマットがあったので悟は無事でした。それを見た八代は脱力して、素直に逮捕されていきます。
悟と八代の関係を「対決」という視点で語らなかったのは非常に良かったです。ハリウッド映画なら殴り合いか撃ち合いになるところですが、僕だけがいない街では「納得」という解決方を選んだのは非常に好感が持てました。
下にマットを用意して待っていた仲間たちですが、仲間たちのエピソードも心を揺さぶりました。
悟は小学生の時にリバイバルして、連続誘拐殺人事件を阻止しようとした時に、「ひとりにさせない」という作戦を取ります。被害者のひとりである雛月加代と友達になり、ひとりにさせないことで事件を阻止しようとしました。結果として加代は両親による虐待から開放され、幸せな未来を手にすることができます。赤ちゃんを抱えた加代の姿が映ったときは、それはもう感無量というやつでした。
そういった活動を共にしてきた仲間たち。仲間たちは悟のことを信頼し、感謝するようになっていきます。だから15年眠り続けた悟が目覚めた時、なんとしても協力したいと思ったのでしょう。今度は「悟をひとりにさせない」ことにしたのでしょう。
この仲間の絆は感動的でした。
さて、ここまで一度も話に登場してきていないラブリー愛梨たその話をしなくてはいけませんね!!
ピザ屋のバイト仲間だった片桐愛梨(かたぎりあいり)は、藤沼佐知子殺害の容疑で警察に追いかけられる悟に手助けします。普段の悟の行動から、悟のことを強く信頼していたようです。健気で真面目で明るくて人懐っこくてかわいい愛梨たそですが、後半はめっきり出番がなくなります。正直もう出てこないんじゃないかと思ったりもしましたが、ラストのラストで登場しました。
漫画家となった悟は、かつて(別の時間軸で)悟が藤沼佐知子を殺した容疑で警察に捕まった場所を訪れます。そこは、悟のことを信じてくれた愛梨たそと最後に別れた場所でもありました。そこで偶然愛梨たそと再会します。「再会」ではありますが、連続誘拐殺人事件が起こらなかったこの時間軸では、悟はピザ屋のバイトもしていませんので実質初対面です。「さあ、ここから初対面で始めましょう。」という、これからを感じさせるようなラストシーンで物語は幕を閉じます。
このラストは非常に爽やかで好感が持てました。愛梨たそのことが物語の中であまり語られていなかったので、少し感情移入具合が足りなかったのですが、それでもなお良いラストだったと思います。愛梨たそをもう少し掘り下げて描いていたなら、もっと素晴らしいラストになっていたかもしれません。そこが惜しいところ!
「苦境の中で苦労しながらも何かに向かって頑張っている」という姿が描かれていたので、もう少し詳しく愛梨たそのことが知りたかったです。
「仲間」とか「家族」とか書いておきながら、結局は女子高生かよと言われそうですが、結局は女子高生でした。すいません。
散々登場しなかったくせに、最後だけいいところ持って行った愛梨たそが悪いと思います!!