monster

アニメ「MONSTER (モンスター)」




あらすじ(ネタバレなし)

天才と称される日本人の脳外科医師「天馬賢三(てんまけんぞう)」。正義感の強い天馬は、営利主義の病院の方針と対立していた。そんな折に、天馬は病院の意に反して、頭に銃弾を受けた「ヨハン」と呼ばれる少年の手術を行い、その少年の生命を救う。しかしその後、天馬と対立をしていた病院の人物が相次いで死亡。それから数年経ったある日、天馬は成長したヨハンに再会する。ヨハンは彼の目の前で殺人を犯した上に、過去にも殺人を犯したことを告白。天馬は、「怪物」の命を救ってしまったということに気づく。殺人犯としての濡れ衣を着せられた天馬は、警察から逃亡しながらヨハンを追って旅をする。

感想(ネタバレなし)

先の見えない恐怖感が凄い。

恐怖感にもいろいろなタイプがありますが、モンスターの中で感じる恐怖感は独特なものです。バイオハザードのような「ドカーン!ギャー!」という感じではありませんし、貞子のような「ヒュウー、ドロドロドロドロー」というタイプの恐怖でもありませんし、もちろんアウトレイジのような「ナニサラシテンジャワレー!」っていうタイプの恐怖でもありません。イン ザ・ミソスープのようなサイコな恐怖というのはやや近いですが、それでも遠いです。

ストーリーの展開が読めないので、前が見えない恐怖というのは強いです。更に、ストーリーは中盤で混沌としてきて、本当に「ヨハン」という青年は存在するのだろうかというような疑問が生まれるほど混迷を極めます。「分からない」「前が見えない」「でも人は死んでいく」。何が本当で、何が嘘なのか。今見えているものは真実なのか。精神的に来る恐怖感です。

シリーズ全体としてはエンターテインメント作品ですので、アクションあり、ドラマあり、出会いや別れありと盛りだくさんですので、恐怖感がテーマというわけではありません。ただ、「恐怖感」という部分以外はそれ程意外性はなく、普通だなと思いました。

ヨハンを追って旅をしますので、いろいろなミニストーリーがあります。まあ、そのミニストーリーの中で人が死んでしまったりはするのですが・・・。時には主人公の天馬が全く登場せず、別キャラクターがメインでストーリーが進んでいくこともあります。全74話ありますので、それこそ一つひとつのストーリーや、一人ひとりのキャラクターを掘り下げながらストーリーが織りなされていきます。しかも、ミニストーリーの中のキャラクターを使い捨てにせず、あとで重要な役どころで再登場したりします。

長いストーリーですが、上手く構成されていますし、良く作り込まれているという印象を持ちました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのアニメを見ていない方はご注意ください。


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あれだけの事件があったのに、結局天馬とヨハンは変わらなかった。ただただ周りの人物たちを巻き込んで、周りの人たちを変えていった。その変化が幸福に転んだキャラクターもいれば、不幸に転んだキャラクターもいる。そういったキャラクターたちは、モンスターの中での大きな魅力だったと思います。オットー(こそ泥の人)とか、エヴァ(偉そうな金髪)とかは、ちょっとやり過ぎ感ありましたけどね。あまりに良い人になりすぎた。特にエヴァの変わりようは無理があると思います。

ドクター天馬は、結局最後もヨハンを救いましたね。あれだけ長いストーリーを経て、また振り出しへ戻ったとしか思えません。ただ、これだけ長くドクター天馬を見ていれば(74話ですよ!!)「まあ、そうだろうな。」とは思います。そもそも「ヨハンを殺す!」って息巻いてた時の方が「どうかしてる」感ありました。天馬は、「自分が信じるもの」という軸をしっかりと持ったキャラクターだったので、納得できるラストです。ただ、エンターテインメントとしてはインパクトが弱いラストだったように思います。

長いストーリーでしたが、中盤あたりの「ヨハンは本当に存在するのか」が曖昧になる辺りのストーリーが一番好きです。ヨハンは本当はドクター天馬の中にいるのではないだろうか。ファイトクラブのように精神疾患的なストーリー展開のなるのではないだろうか。と、かなりエキサイティングな展開だったと思います。アクション的には地味でしたが、精神的にはエキサイティングだったと思います。結果としてはそれはミスリードだったわけですが、「裏切られた」という感じのしない良いミスリードだったと思います。

こういった良いミスリードはありましたが、「死亡フラグ」としてはあからさま過ぎました。ストーリーの展開は読めませんが、死んでしまうキャラクターは完全に読めました。これは良くない。「おまえあんなに悪いキャラだったのに良いことしちゃって、そんなことしたら死んじゃうよ!」とか、「今後の夢とか語って別れちゃって、おまえ絶対死んじゃうだろ!」とか、まあ、そんなのがいっぱいありました。それはそれで、逆に楽しめたと言えば楽しめましたが、正直要らない。硬派なストーリーは、硬派に楽しむべきだと思います。

話は変わりますが、ヨハンは結局何がしたかったのでしょう。旧東ドイツの孤児院で受けた実験など、幼少期に受けたトラウマが関係しているのは間違いないのですが、ヨハンの殺人に一貫性がなく、ブレがあったように感じました。ストーリー中でずっと「怪物」として描かれてきたヨハンは、終盤で「人間」として描かれるようになっていくので、一貫性が無いことは人間っぽいと言えば人間っぽいです。ただ、殺してきた人数が人数ですし、やってきたことがやってきたことです。もう少し何か説明があっても良かったように思います。「自分に関わってきた人物を殺して、自分も死ぬ」という完全な自殺とかいう説明だけではちょっと納得できません。

「ストーリーの中で行動するキャラクター」と、「ストーリーのために行動するキャラクター」というのがいます。ドクター天馬は完全に「ストーリーの中で行動するキャラクター」でした。見ている側はドクター天馬の性格を良く理解できますし、だからこそ一つひとつの行動に共感できます。

ヨハンはどっちでしょう。私がストーリーを見落としたためにヨハンの行動の一貫性を見抜けなかった可能性はあります。ただ、ヨハンは「ドクター天馬を活かすための小道具だった」ように感じてしまいました。つまり「ストーリーのために人を殺し続けたキャラクター」に感じました。

そもそも、バラの屋敷の実験で「ワインを飲んで人がいっぱい死んじゃう事件」は何が目的だったんでしょう。孤児院「511キンダーハイム」での実験は納得がいきます。兵士やスパイを養成するために非人道的な洗脳教育をするというのは、2次大戦前後の時代ならば実在しそうです。赤いバラの屋敷でも同じような実験をしていたのでしょうが、なんでワイン飲ませて人を殺したんでしょう。謎です。

ワインを飲んで人がいっぱい死んじゃう事件に遭遇したのはヨハンの双子の妹のアンナ、511キンダーハイムで教官と他の孤児たちを皆殺しにしたのがヨハン。このあたりの双子を使ったストーリートリックは巧みでした。双子を男と女にしたのが良かったですね。「女だからアンナ」と思っていた視聴者を、「女装したヨハン」というトリックで見事に欺きました。このトリック、何度か使われていたのですが、私は毎回しっかりと引っかかっていました。トリックが巧みだったのか、私がチョロ過ぎたのか。

ヨハンの件で腑に落ちない部分はありますが、はじめから最後まで展開が全然読めませんでしたし、ストーリー全体を覆っていた独特な恐怖感も楽しめました。死亡フラグ全開なところなんかは少し子供向けっぽい感じもするのですが、全体的に硬派なストーリー展開で好感も持てます。ただ、とにかく長い。もう一回見返すのには大きな勇気が必要です。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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