亜人

アニメ「亜人」




あらすじ(ネタバレなし)

決して死なない新生物「亜人」。「死なない」ということを除いて普通の人間と何ら変わらないため、実際に死ぬまで亜人かどうかの見分けはつかない。亜人は、その不死という特性のため、非人道的な実験の被験体にされるという噂が流れていた。
そんな中、高校生の永井圭(ながいけい)は交通事故に遭い死亡。しかし永井は生き返り、自分が亜人であることを知る。彼は幼いころの友人・海斗(かいと)の助けを借りて逃亡するが、様々な思惑を持った人達によって追われることになる。

感想(ネタバレなし)

スピード感のあるスリリングな展開で、一時も飽きさせないエンターテイメント作品。

亜人であることが発覚し逃亡を試みる永井に対し、思惑の違う複数の組織が捕獲を試みます。警察はもちろん、厚生労働省や製薬会社、他国の諜報機関、賞金を目当てにしたゴロツキ、亜人仲間を集める亜人など、それこそ多種多様に永井は追われていきます。序盤はこの逃亡劇がメインになってくるのですが、物語は次から次へとテーマを変えて、フェーズを進行させていきます。

この進行が非常にスピーディーで、物語はひとつの所に留まることがありません。見ている側としては息をつく暇はありません。「この先はどうなるのだろう。」と、常に続きが気になるような濃密圧縮具合です。

ストーリーはどんどん加速していきます。初めは「死なないだけ」ということしかわからなかった亜人には、実は黒い幽霊のようなものを出して戦闘ができるという特殊能力があることがわかっていきます。それ以降はややバトル要素が増えていきます。バトルシーンがあまり好きではない私にとっては、これは歓迎できませんでした。
キャラクターそれぞれの心情や、それぞれの立場の思惑の絡まりで面白くしていってほしかったのですが、「バルト」という安直な方へ流れていってしまっているのはちょっと不満です。

もうひとつ言わせてもらうと、永井圭が「国内三例目の亜人」ということから、亜人というものがかなりレアな存在であるように思えたのですが、ストーリーが進んでいくとチラホラと新たに亜人が登場します。1000年に1人と言われた超サイヤ人がチラホラと増えていくように、「亜人のバーゲンセールか」と思うような増え方でした。

そんなことで私が苦手とする点が多かったりするのですが、キャラクターそれぞれの思惑の絡まり方は非常に面白かったと思います。特に、主人公の永井圭がかなりクズっぽい性格なのは面白いです。自己中心的で合理主義。自分の得にならないような人間関係は徹底して排除する。自分にとって得になるから表面上はそれなりの付き合いをしているが、利益にならないとなるとバッサリと切り捨てるようなクズです。
「自分は亜人で、追われる身である」ことがわかったクズが、どんな行動をとっていくのか。この点は面白かったです。

もうひとり、下村泉(しもむらいずみ)というキャラクターも魅力的でした。詳細を書くとネタバレになってしまうので後ほど詳しく書こうと思います。

CGアニメーションということで、「シドニアの騎士」のようなビジュアルです。普通のアニメと違い、ツルツルとした感じの質感があります。好き嫌いが分かれそうなビジュアルですが、私はCGアニメーションのこの不思議な質感が結構好きだったりします。とはいえ、微妙な表情の変化なんかはまだまだダメダメなので、これから頑張ってもらいたいなとは思います。何においても、表情は大事ですから!

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのアニメを見ていない方はご注意ください。


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どんどんバトルモノになっていくのが残念でなりません。
最後はクライマックスなのでアクション多目なのは仕方がなかったかもしれません。しかし、最後のあのバトルはちょっと無理ゲー感あったように感じます。いくら何度死んでも大丈夫な亜人といえども、あれだけ組織化されたプロの特殊部隊を相手にまともに戦えるとは思えませんでした。しかもショットガン1丁で。もう少しまともなバトルをお願いしたいところです。

最後はとんでもなく中途半端なところで終わってしまいました。亜人に非人道的な実験を繰り返してきたグラント製薬のビルを襲撃し、特殊部隊を全滅させてその場をあとにした佐藤が、「これは始まりにすぎない」ことを宣言して終わってしまいます。
過激な行動に出る佐藤に対して非干渉を通していた永井圭も、このままでは自分の穏やかな日常が壊されてしまうと思い、佐藤を止めに行くことを決めます。

本格的バトルがこれから始まるというところで物語は終わってしまうのです。映画もやるということなので、「続きは映画で!」ってことなのでしょう。この先はバトル要素が多くなりそうなので、大きなスクリーンで見たら迫力があるかもしれません。バトルにあまり興味がない私は、レンタルが出たらまとめて見ようかなと思ってます。

永井圭のクズな性格はかなり好きなのですが、少しブレがあったようにも感じます。基本的に合理的な行動を取るのですが、時々自分の不利益になる行動を取ることがあります。永井が佐藤の策略によって一時捉えられて実験をされたあと、佐藤の助けを受けてその場から脱出する際、研究員をひとり助けます。その研究員を助けることで、自らの脱出にリスクを負うという不利益を被るのですが、永井はそのリスクを承知で助けます。

あとで永井はその時の行動を振り返って「人助けなんてするもんじゃない。」と言っているので、自分でもその行動の意味を理解できていないようでした。この先物語がどのように進んでいくのかはわかりませんが、この性格のブレが良い方向に進んでいくことを望みます。性格のブレが、永井の成長のチャンスや、変化のキッカケになっていけば面白くなりそうだなと思います。ただのブレで終わってしまうのならば最悪です。

先ほども少しだけ書きましたが、もうひとり魅力的なキャラクターがいました。下村泉です。
彼女は自分自身が亜人でありながら、亜人を捕らえる側の人間として生きています。厚生労働省から派遣されている戸崎優(とさきゆう)という男の部下として働いています。亜人でありながら人間として生きている、非常に不安定な立ち位置にあるキャラクターです。テレビアニメシリーズの中ではあまり活躍の場がありませんでしたが、これから物語を引っ掻き回していくような重要な役柄であると思います。

真面目で優しさのある泉ちゃんですが、「自分が亜人だと知られたら辛いことになる。」という恐怖心から、信念に従った行動をとれていません。しかし根が真面目な泉ちゃんなので、これから彼女の心情の変化と共に大胆な行動を起こしていくと思われます。これから物語のキーキャラクターとして活躍してくれることを願っています。

この泉ちゃんに対して、上司の戸崎というキャラクターは薄っぺらのペラペラに感じました。はじめは仕事に対してストイックでクールであるように見えたのですが、物語が進んでいくにつれて、薄っぺらい設定が見え隠れしてきました。どうやら戸崎には意識不明で入院中の恋人がいるらしく、その治療に莫大な費用が必要なようです。そのお金を手に入れるためには、汚い仕事でも平気でこなすようです。

戸崎が仕事に対してストイックであるように感じたのは、恋人を助けるためならばどんな仕事でもやってみせるという意気込みがあったからのようです。戸崎の行動原理はいたって正当で、共感することができるのですが、設定としては取ってつけたような適当さで、ちょっとペラペラすぎるんじゃないかなと思いました。もうちょっとまともな設定を作ってあげたほうがいいんじゃないかなと思います。

佐藤という名前の亜人は、掴みどころがなくて難しいキャラクターでした。何か目的があって人間と対峙しているのか、ただ人殺しがしたくて人間と戦争をしようとしているのか。ただ人殺しがしたいだけの亜人であるのならば、「敵」としてはわかりやすい構造になりますが、その分物語自体は薄っぺらくなりそうな気がします。わかりやすい悪は物語をつまらなくします。

この佐藤を演じた大塚芳忠(おおつかほうちゅう)が素晴らしかったです。掴みどころのないキャラクターを、見事に不気味に演じていました。大塚芳忠は出てくるたびに「良い演技をするなー。」と思っていたのですが、今回の佐藤は正にピッタリとハマっている感じがしました。大塚芳忠あっての佐藤という感じがしました。

永井圭の幼少期の親友の海斗や、永井圭の妹の永井慧理子(ながいえりこ)など、重要キャラクターと思いきやほとんど注目されなかったキャラクターが結構いました。これから再登場して活躍してくることを望みます。特に慧理子ちゃんね!妹は大切だとおもいます!!

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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