終電にはかえします

コミック「終電にはかえします」 雨隠ギド




あらすじ(ネタバレなし)

女の子が女の子に出会って恋をする。

校内ミスコンを狙う女の子が、電車でよく会うプリン頭にマスクの女の子に懐かれる「ひらがな線、あいう駅より」と「終電にはかえします」。

学校では空気のようだったサトウさんと、プラネタリウムを見ることになる「少女プラネタリウム」。

3人の女の子の恋心が入り乱れる「一瞬のアステリズム」。

幽霊となった少女・みずきと、唯一みずきを見ることができるみさおが出会う「永遠に少女」。

大人の入り口に立って不安を感じる少女と、その姉と、姉の友達との関係を描いた「大人の階段の下」。

少女プラネタリウムに登場するお姉さん2人の馴れ初めを描いた「少女星図」。

揺れ動く心を綺麗に描いたラブストーリーのオムニバス。

感想(ネタバレなし)

これが百合本というものなのですね!!

ということで、初めての百合本ということになりました。
百合本というのはどれもこのようなものなのでしょうか?それぞれのキャラクターの微妙な感情の移り変わりが、ここまで繊細に描かれるものなのでしょうか?これは特別なものなのでしょうか?初心者の私に是非ご教授願いたいところです。

目次を見て、オムニバス作品であることには気づいていて、そのつもりで最初のお話を読んだんです。それで、「なんて素敵な終わり方をするお話なんだろう!」と思ったのです。ですが、このお話には続きがあったのです。「ええ!!いい終わり方だったのに、続き書いちゃうのか!!!」と思ったのですが、そっちのお話も素敵な終わり方をしていて、2度続けて「素敵」を頂いてしまいました。

全体的に、胸が苦しくなるような恋心と、フワッと優しくなるようなストーリーが描かれています。読んでいて涙することになるのですが、悲しさや辛さの涙ではありません。あえて言うならば優しさの涙でしょうか。心地の良い感動をもらえました。

セリフで説明をしすぎず、キャラクターたちの行動で心情を表しているのも好感が持てます。ただし、ボーッと読んでいると見過ごしてしまいます。キャラクターの一挙手一投足を見て心情を追うのです!集中して!恋心に集中して!!

「百合マンガを勧める前に、もしもそれが百合ではなくてホモだったらということを考えたうえで勧めてほしい。」という言葉を聞いて、「あはは」と笑っていたのですが、今回、私は声を大にして言いましょう。この「終電にはかえします」の登場人物がすべて男に変わっていたとしても、変わらず「素晴らしい作品だった!」と言うでしょう。
これは、「女の子のきゃっきゃうふふ」を見てニヤニヤするだけの作品ではありません。良質なラブストーリーとして、キャラクターの気持ちを感じる作品です。

ただし!女の子のきゃっきゃうふふは良い物です!

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのコミックを読んでいない方はご注意ください。


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雨隠ギドは、「甘々と稲妻」という、料理と女子高生と幼女(と、シングルパパ)のお話を書いている方です。甘々と稲妻つながりで今回「終電にはかえします」を読みました。甘々と稲妻の方も、心温まる優しい作品です。とか偉そうなことを言いましたが、まだ一巻しか読んでいません。うー、続きが読みたい。

そんなわけで、かなり期待して読んだのですが、期待は裏切られませんでした!

最初のツネちゃんからして可愛すぎると思うのです。あさき(主人公)が、いろいろ焦って「あの駅いいよね、あの駅いいよね。」と話題を振るも、ツネは「どの駅もつまらない。」とにべもないのですが、「あいう駅は?」と聞いたときだけ、「あいうは好きですよ。(あさき)センパイの駅だし。」と答えるのです。家の最寄り駅に着いたあさきは電車を降り、照れくさそうな顔をしたツネは電車に乗ったまま行ってしまう。
この先をいろいろと感じさせる、最高に美しい終わり方だと思いました。「ああ、こういうラストを書く人がいたー!」って嬉しくなったものです。

まあ、冒頭に書いた通り、このお話は終わらなかったのですが・・・。

その後ふたりは友達として、多くの時を共に過ごしますが、先輩であるあさきはツネよりも先に高校を卒業することになります。今までのように会えなくなるという不安から、ふたりはケンカをしてしまうのですが、最後は泣きながら「一緒にいたい。」と伝え合います。
この泣いてるシーンがふたりとも可愛くて可愛くて。子供のように「あーん」って泣いている姿が可愛くて可愛くて。
そして、「ツネと二人、行き先のみえない電車にのりました」というラストシーンで終わります。この先を感じさせる、綺麗なラストだと思いました。

ちなみに、私が一番好きなお話は、「永遠に少女」です。ふたりの気持ちが一番繊細に描かれていたお話だと思います。
永遠に年をとらない幽霊のみずきと、人間として成長していくみさお。お互いがそのことを理解し、苦しみ、それでもタブーとして言葉にはせずに暮らしていく。みずきは「自分がもう死んでしまって幽霊になった事を理解しているし、それでもみさおに会えた事の方が嬉しい。」と自分を納得させていましたが、みさおが勇気を持ってタブーを冒し、本心をぶちまけると、みずきは逃げるようにしてみさおの前から消えてしまいます。

この辺りの切ない感情が丁寧に描かれていて好きです。最後にみさおがおばあちゃんになってからが描かれて終わるのですが、こちらもこの先をいろいろと予感させる終わり方できれいです。
ああ、書き忘れるところだった!このお話はですね、ウエディングドレスを着て、抱き合いながらふたりで泣くシーンがとても美しいのです!!

一番危ういなと思ったお話は、「一瞬のアステリズム」ですね。はなちゃんのことが好きな蝶子、蝶子のことが好きな蜜美、蜜美のことが好きなはなちゃん。それぞれがそれぞれに恋する姿を見て、「かわいい!」と思う3人。最後には、「3人で仲良くしよう。」という結末になるんですが、いや、それは危ないだろ。これはそのうちに修羅場を迎えるぞ!そういう意味では、この先を感じるラストなのかもしれないけど、いやー、これは知らんぞー。絶対修羅場だぞー。

なお、このオムニバスの中で私が一番好きなキャラクターは、この「はなちゃん」です。ソフトボール部でバリバリスポーツするのにちっちゃくて可愛い子。ちっちゃい元気っ子大好きです!

他のお話も、それぞれに印象的なシーンがあって良かったです。

「少女プラネタリウム」では、スズキさんが自分の気持ちに気づくシーンが心に響きました。一緒にプラネタリウムを見る友達として見ていたサトウさんが、他の女の人と抱き合って眠っているのを見て嫉妬し、自分の恋心に気づいてしまいます。相手が女の子であることに悩み、「気づいてもらえないと、どんなに光っててもないのといっしょだから。」と思い、そして「今生まれてる爆発しそうな気持ちは、あなたに伝わるように名前をつけてあげないと、ないのと同じなの!?」と、苦しみます。
ここの一連のセリフ(心の声?)は凄く好きで、特に「名前をつけてあげないと」の辺りは最高と思います。早く!名前をつけてあげて!!!それは恋だよ!!!!って。
全然関係ありませんが、メガネ大事です。

「大人の階段の下」も、姉妹の絶妙な関係が描かれていて好きです。しかも姉はツンデレ!口も悪いし意地悪もするのに、最後の最後は優しい!

最後におまけのようについていた「少女星図」は、ちょっとした小話でおもしろかったです。寝ぐせが直らなくて卒アル写真サボる子面白かったです。

ということで、初めての百合本が「終電にはかえします」で良かったかなと思います。まあ、他を知らないから比較はできないのですが。こんな作品ばっかりならば、続けて他のも読んでみたいと思います。差し当たっては雨隠ギドさんの作品から。
ところでこの方のお名前、一体なんて読むのか・・・。すみません、こんなに「良かった!」って言っておきながら(甘々と稲妻も)、作者様のお名前を読めないとは・・。
今調べてます。ググってます。全然出ない。・・・あまがくれ・・・あまがくれですか?「あまがくれぎど」さんですか?間違っていたらごめんなさい!!

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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