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小説「愚物語」 西尾維新




あらすじ(ネタバレなし)

言わずと知れた、物語シリーズのスピンオフ的なオフシーズン集。終物語で完結したシリーズのその後を描く三本立て。最初は、老倉育のその後を描いた「そだちフィアスコ」、次が、神原駿河のその後を描いた「するがボーンヘッド」、最後が、阿良々木月火のその後を描いた「つきひアンドゥ」。

感想(ネタバレなし)

例によって、小説の90%以上を言葉遊びに費やすというスタイル。今回もいつものように、とってもとっても軽快でした。その代わりにストーリーが遅々として進まないのもいつも通り。「こんなに文字を読んだのに、時系列は全然進んでないよ!」って思ったのもいつも通り。
最初のエピソードは老倉育が主人公ということで、期待に胸を膨らませて読み始めました。しかも語り部は育たそ!(育ファン)

がしかし、ストーリーがイマイチ。物語シリーズは、ふざけてばっかりいるくせに、最後の1%で人や物事の本質をついてきたり、胸の奥のほうを抉ってきたりするのが魅力的だと思っていたのですが、今回は全くそういうのはありませんでした。本当にオマケもオマケ。中身は何もない。

その代わりに、イラスト担当のVOFANが良い仕事をしています。いつも話のはじめにイラストが入るじゃないですか?今回は3話収録されているんで、イラストも3枚入っているんです。このイラストがどれもかわいくてかわいくて。育たそファンとしては、最初の後ろ姿育たそでかなりやられたのですが、そのあとの神原駿河も、阿良々木月火もかわいかったです。特に、斧乃木余接ちゃんの人形を持った月火のイラストは破壊的なかわいさでした。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの小説を読んでいない方はご注意ください。


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まずは第1話「そだちフィアスコ」の感想から。
まさかの老倉育一人称!!最初の一行で心躍りました。いや、小踊りました。(西尾維新風)
終物語で不登校から復活からのまた不登校になった、老倉育のその後の物語です。
彼女が転校して、新しいクラスで最後の約一ヶ月の高校生活を無難に乗り切ろうとするも、自らの性格が邪魔をして、結局孤立してしまうまでの顛末。

徹底的な自虐一人称語りが清々しかったです。自分がクズでズルで性格が悪いことを自覚して、それでもなんとか幸せになろうとするも、空回りしていく様は老倉育らしい感じでした。いい感じで心の内面を描けていました。

ストーリーに関してはなんてことありません。誰と誰が対立してて、誰と誰が結託していて、どんなふうにクラスメイトを不登校にして、どんなふうに自分の立ち位置を確保するか。いわゆる学校のドロドロを描いた、「子供といえど、しっかりと黒い感情も持ってますよ」的なお話でした。「桐島、部活やめるってよ」系です。

友人を不登校に追いやり、その罪悪感を感じながら学校に通い続けていた惣瀬亜美子(ゆるがせ あみこ)が、転校生の老倉育を口実に自分も学校に来なくなるという心理は、全然理解できませんでした。「なんじゃそれ?」って感じでした。傍観者であった客藤乃理香(きゃくふじ のりか)が、罪悪感から自分を正当化する心理は理解できました。少し極端ではありましたが、クラス内の心理とかはしっかりと描けていたのではないかなと思います。

それと、登場人物の名前が読めなすぎです。惣瀬亜美子(ゆるがせ あみこ)とか、客藤乃理香(きゃくふじ のりか)とか、珠洲林リリ(すずばやし りり)とか、旗本肖(はたもと あやかり)とか、最初登場する時は読みがながふってあるんですが、それ以降は読みがながないので、チラチラ前のページを確認しながら読んでました。読みにくかったです。

続いて第2話「するがボーンヘッド」の感想を。
こちらは神原駿河の一人称語りです。ミイラとか悪魔とか、そういう騒動のその後のお話。部屋の片付けをしていると、もう無いはずの左手のミイラを発見。その上、破れたふすまの中から暗号文を発見する。その暗号文を解いていく中で、自分のことや、ミイラのことや、母親のこと、これからのことを決心していく内容。

基本的に忍野扇ちゃんとのやり取りなんですが、完全に忍野扇ペース。神原駿河のあの健全エロは鳴りを潜めていました。いや、あれは腐健全か。
忍野扇の上からズバズバ言う系のギャグが冴えてました。神原の腐健全エロファンとしては少し物足りない感じでした。

暗号を解読していくお話と見せかけて、神原の内面の成長を描いているところは良かったです。ただし、基本的には何も起こらない。

最後は第3話「つきひアンドゥ」の感想を。
語り部は、予想に反して斧乃木余接です。阿良々木家で(主に阿良々木月火の)監視をしていた斧乃木ちゃんだったが、ある日、うっかりアイスを食べているところを月火に見つかってしまうお話。斧乃木ちゃんは、魔法使いの魂が人形に宿って、悪いやつをやっつけなくてはいけないという話をでっち上げるも、あれやこれやと空回りしていく内容。

月火の相変わらずのぶっとび具合が魅力的なお話。全体的にドタバタ劇で、ただドタバタするだけ。面白くもなんともありませんでした。

千石撫子と八九寺真宵がチラッと出てきたのが良かったところ。
千石撫子は神から人間に戻ったあと、学校に行かずにマンガを書いていました。その絵や技術は中々のものらしい。撫子の「私は、世の中が甘くないことが、とても嬉しい」というセリフは、結構胸に刺さりました。撫子の成長を一言で表す、名台詞だと思います。

八九寺真宵は、しっかりと神様をやっているようです。八九寺の「失礼。一枚、噛みました」というセリフは、結構ジンときました。八九寺のキャラのブレなさを一言で表す、迷台詞だと思います。真宵だけに。

全体的にストーリーは退屈で、言葉遊びが楽しかった以外には面白みはありません。「その後」が聞けて良かったなっていう程度です。ですが、物語シリーズは「つまらなかったから、次は買うのやめようかな。」って迷ったやつが凄く面白かったりするから気が抜けません。次は、オフシーズン第二弾「業物語(わざものがたり)」、2016年刊行決定だそうです。どうしようかと迷いながら、きっと買ってしまうんだと思います。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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