マルタのやさしい刺繍

映画「マルタのやさしい刺繍」 ベティナ・オベルリ

あらすじ(ネタバレなし)

スイスの小さな村に住むおあばあさん・マルタは、夫に先立たれ生きる気力をなくしていた。そんなある日、マルタは若い頃の夢であったランジェリーショップの出店を決心する。しかし、保守的な田舎ではなかなかマルタの行動を理解されず、妨害工作を受けたり、酷い言葉を浴びせかけられたりする。

感想(ネタバレなし)

元気なおばあちゃんたちに、勇気と感動を与えてもらいました。

私はARIAというコミックの中に出てくる、「何時でも何処でも何度でも、チャレンジしたいと思った時が真っ白なスタートです。自分で自分をおしまいにしない限り、きっと本当に遅いことなんてないんです。」というセリフが大好きです。マルタのやさしい刺繍は正にこのセリフをテーマにした作品で、優しさと勇気をくれる映画でした。

保守的な男社会の田舎の村で、刺激的なランジェリーを売るということは「恥」だと考えられていました。男たちはそういった下着をエロ目線でしか見ることができず、その男たちの体面を保つために女達も萎縮してしまうような、そんな超保守的コミュニティーです。しかもそれを、牧師の母親であるヨボヨボのおばあさんが始めようというのだから、村はもうテンヤワンヤの騒ぎになります。

騒ぎになるだけでなく、エグい仕打ちを受けたりもします。映画の中では、村の男達の大半が自分勝手で下卑た感じに描かれていてやや不憫なのですが、閉鎖的なコミュニティーではそういう仕打ちを受けることもあるのかもしれません。マルタがかわいそうで、凄く応援したくなりました。

マルタが変わっていくことで、マルタの周りの人たちも変わっていく展開が良かったです。人はお互いに影響し合い、変わっていけるんだなと思いました。ひとりの勇気ある行動が、周りの人たちに良い影響を与えていく描写が、とても清々しかったです。

お年寄りが活躍する映画は痛快でありながら感動的な作品が多くて、私は好きです。マルタのやさしい刺繍は、おばあちゃんが活躍するというところが更に痛快度をあげていたように感じました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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友達って大事ですね。
マルタの友人たちは、マルタが夫を失って無気力になっている時も「なんとかしないと。」と相談していましたし、マルタがランジェリーショップを開きたいと言い出した時も、積極的に手助けをしてくれました。事が事だけに、最初はマルタを受け入れられずに離れていく友人もいましたが、最後にはお互いを理解して協力をしてくれました。きっとマルタひとりだったら、ランジェリーショップを始めようとすら思っていなかったでしょう。マルタは友人たちに支えられ、そしてマルタは友人たちに良い影響を与えていきました。

お年寄りが新しいことに挑戦し、前に進んでいく姿はコミカルでありながらも感動的でした。
村ではマルタのランジェリーが受け入れられないと思った友人たちは、「インターネット通販」という手法を取り入れます。おばあちゃんが「インターネット」という言葉を発するだけで笑いが取れるような村です。「女性が何かを始める」ということにさえ抵抗のある村の中で、パソコン教室に通って勉強しようとするおばあちゃんかっこよかったです。そのパソコン教室で男の人との出会いもあったりして、ニコニコしながら見れました。

インターネットでの注文が増えると、人手が足りなくなります。マルタは刺繍教室へと赴き、下着への刺繍を手伝ってもらえるよう交渉に行きます。「それはできない。」と断る人もいますが、「新しいことには挑戦していかないといけない。」と言って、協力してくれる人もいました。保守的な村でありながらも、マルタの挑戦に賛同してくれる人もいたのです。
今、目の前にある世界だけ見ているとわからないけれど、広く視野を広げていけば賛同してくれる人がいるかもしれません。マルタが積極的に前に進んだ結果、新たな賛同者が増えていきました。この前進していくパワーというものの凄さを感じました。

それにしても、保守派の男たちによるマルタへの仕打ちは酷いものでした。マルタの息子は、店の商品をすべてゴミとして持ち出し、そのお店を聖書を読む集まりに使おうとしました。マルタが一生懸命作った作品をゴミとして扱うなんて許せません!!
夜になると、マルタとマルタの友人たちは、コッソリ捨てられた商品たちを回収し、お店を元通りにします。聖書を読む集まりに参加しようと集まったメンバーは、部屋中にランジェリーが飾られているのを見て、「こんなところではできない。」と言って出ていきます。マルタの店を「こんなところ」と言ったことに対しては許しがたいですが、マルタの作戦がまんまとはまったのは痛快でした。

マルタの息子は最後には母のために動いてくれるのですが、店のショーウィンドウに家畜の糞や鶏を入れた村の有力者の男は最後まで酷かったです。お店の妨害工作をしたというだけで刑事訴訟モノだと思うのですが、こういう人間が有力者というのもどうなのでしょうか。村で開催されるコーラス大会のステージ上で、この男はマルタに凄い剣幕で詰め寄られます。
ハッと我に返ったマルタは状況を把握して少し尻込みしますが、会場に集まっていた人たちの中にマルタの想いに賛同する人たちもいて、その人たちの声に後押しされます。村全体から白い目で見られていたマルタは、いつの間にか多くの仲間を巻き込み、村の大きなムーブメントを作ったのです。

嫌な男に一泡吹かせたという、エンターテイメント的なスカッとする演出でもありますし、マルタの頑張りが実った感動的な場面でもありました。

マルタ以外のキャラクターにも、魅力的なお年寄りたちがたくさん登場しました。娘のために「自分はアメリカに行ったことがある。」と嘘を言い続けてきた友人や、息子との軋轢を通して、長く連れ添ってきた中ですれ違いも多くなった夫と、もう一度寄り添っていこうと決心する友人も、バイタリティーある素敵なお年寄りたちでした。

時代的にも社会的にも我慢をすることの多かった世代の女性が、何歳になっても挑戦していく姿に感動させられました。コミカルなシーンを挟みながらも、優しくて元気な感動があり、それでいてスカッとするような痛快なストーリーでした。「自分ももっと!」と思わせてくれる映画でした。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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