思い出のマーニー

映画「思い出のマーニー」 米林宏昌

あらすじ(ネタバレなし)

ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学作品を原作とした、スタジオジブリ制作のアニメーション映画。

自分に自信が持てず、周囲の人々と距離を置きながら生きている12歳の少女・杏奈は、喘息の療養のために空気の良い場所へ訪れる。その村の廃屋で、マーニーという少女に出会う。マーニーは誰も住んでいないはずの廃屋に住んでいたり、突然杏奈の前からいなくなってしまったりと不思議な事も多いのだが、杏奈と打ち解けていく。お互いを知るにつれて、ふたりは距離を縮めていくのだが・・・。

感想(ネタバレなし)

最近はめっきり良い作品を作らなくなったと思っていたジブリですが、思い出のマーニーは爽やかで感動的な、とても良い作品でした。

最近のジブリ映画でわりと好きだったのは「借りぐらしのアリエッティ」なのですが、なんと久しぶりに好きだなと思ったこの「思い出のマーニー」も、どちらも監督が米林宏昌なのです。ジブリはもう大御所を引退させて、どんどん新しい物を作っていったらよいと思いました。
ただ、借りぐらしのアリエッティも思い出のマーニーも原作がある作品でした。原作の方を読んでいないので、どれだけアニメとしてのオリジナルになっているのかは分からないのですが、やっぱりオリジナル作品が見たいなと思います。頑張ってください!

さて、映画の内容の方ですが、ひとりの少女の葛藤と成長を描いた、爽やかな作品になっていました。
人の優しさに気づいていながらも、それを素直に受け取ることができず、「お節介」と断定して拒み続けてしまう杏奈。そんな自分が嫌いな杏奈。12歳の多感な少女の心情が、きめ細やかに表現されていました。

そして、明らかに現実の人間とは思えないマーニー。マーニーは一体何者なんだろう。杏奈が見ているものは一体何のだろう。そういった、ファンタジー的な要素もワクワクと楽しめました。また、北海道の広大な湿地などを舞台にしているので、その景色や、冒険的な部分も楽しかったです。

ジブリということで、もう冒頭のシーンからもの凄いクオリティーでした。公園でちびっこたちが走り回っているっていうシーンなのですが、ただこれだけのシーンで「わあ!やっぱりジブリだな!」って思わせるような、もの凄いクオリティーです。そのクオリティーのままに大自然を描いちゃったりしちゃったりしているので(←しつこい)、それはもう壮観です。
私は断然ストーリー重視派ですので、技術的な部分はあまり詳しく見ていないのですが、それでも最初のワンシーンで「うわあ!」って思いました。

マーニーと出会い、自分を見つめ直し、周りを見つめ直し成長していく杏奈。大自然の中で繰り広げられる不思議なお話と絡まり、心温まる感動のラストへと一気につながっていきます。「もののけ姫」以降、久しぶりに「これはいいじゃないか!」って思ったジブリ作品でした。

それともうひとつだけ。私は、療養先で杏奈を預かってくれたおばちゃん・大岩セツが凄く好きでした。お節介で世話焼きで、それでいてドーンとほったらかしたりする器の大きさ。まあ悪く言えばガサツで適当なんですが、こういうおばちゃんは身近にいるとありがたいです。大雑把なんで、踏み込んでほしくない部分にもズカズカと踏み込んできたりしちゃうんですが(しかも本人にその自覚はない)、そういうズカズカ感って時には必要だと思うんです。あのズカズカを、5%くらい私にも分けてくれたらありがたいなって思いました。

もうひとつだけと言いながら、もうひとつ言わせてください。
ユリごちそうさまでした!

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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さて、呼べばやって来て、ふといなくなってしまうマーニー。お化けと幻覚の中間ってところでしょうか。
杏奈の心の中にある不安や心配事を口から吐き出させ、口にすることで自分を見つめ直させる。そんな役目を負った幻覚かなとも思いました。精神分裂しそうな危うい感じかなと。最後の方に、杏奈がこの夏に経験したいろいろな出来事が、小さい頃におばあちゃんに聞かされた話の内容に添っていたことが分かるシーンがありました。だから幻覚かなと。
でも、ボートがあったり、パーティーがあったり、気づいたら道端に倒れて寝ていたりと、幻覚だけでは語れないかなと。だから半分は不思議現象。半分は杏奈の心が必要として呼び出した幻覚として、私は捉えました。

それにしても、あれだけ頑なに人を拒み、しかもそれを自分の周囲のせいにしていた杏奈を、よくぞそこまで叩き直したと、マーニーに賛辞を送りたいと思います。しかも優しさでもって叩き直してますし。なんせ、あれやこれやと仲良くしようとしてくれた子に「太っちょ豚」って言い放っちゃうようなオテンバさんでしたからね!
その太っちょ豚は確かに図々しさとか、デリカシーの無さとかは気にかかりますが、その根底にある優しさは見えました。「太っちょ豚」はいくらなんでもやり過ぎかと思います。更に太っちょ豚(←結構気に入ってるごめんなさい)は、仲直りの申し出までしてくれたのに、杏奈は逃げちゃうし。

恐らくこの時点でも、杏奈は人の優しに気がついていますし、逃げてしまった自分に対しても嫌気が差していたのだと思います。それが分かっているからこそ辛いのですね。思春期ですね。
その杏奈を優しく受け入れ、認め、思いやってくれたマーニー素敵です。

マーニーはマーニーで問題を抱えていたようです。大好きな父や母にあまり会えず、放任され、そしてお手伝いの人たちにいじめられていた。杏奈はそのマーニーの話に憤り、共に傷つきます。普段あまり人のことを考えない杏奈に、他人をしっかりと見つめるという大切なプロセスを、マーニーが与えてくれたことになります。

こうして人との関係を築くことを学びながら、自分を見つめることを学びながら、杏奈は成長していきます。
あまり喋らないおじさん・十一や、マーニーがかつて住んでいた部屋に住むことになり、その部屋でマーニーの日記を発見した少女・彩香や、マーニーがかつて住んでいた屋敷の絵を描く老婦人・久子や、何よりも、身寄りの無い杏奈を引き取って育ててくれたおばさん・頼子。そういった人たちとも関係を築き、マーニーを通した視点から繋がりを広げていきます。

マーニーは、杏奈の祖母でした。
映画の中盤くらいから、マーニーはもしかしたら杏奈の母親かもしれない。または祖先のひとりなのかもしれないと思い始めていたのですが、結局種明かしされるまでちゃんとは気づきませんでした。あれ程たくさんヒントが散りばめられていたのに。杏奈がまだ小さい時に両親が交通事故で死んでいることや、その後は祖母と暮らし、その祖母もすぐに死んでしまったことなど、明らかなヒントだったのに。
私が相当ボンクラだった可能性もありますが、物語の構成が良くできてから気づかなかったのだと思います。伏線にしっかり伏線の役割をさせていたように思います。いや、たぶん。私が相当にボンクラなだけかもしれないけれど・・・。

こういったマーニーの真相は、マーニーが生きている時の友人であった久子の口から語られることになります。湿地で絵を描いていたあの老婦人です。そして杏奈は、周りの人々からの優しさを素直に受け取ることを決意し、大きく成長します。
杏奈は、身寄りの無い杏奈を育てることで、自治体から補助金をもらっていた頼子を信じられなくなっていたのですが、頼子の中に感じていた優しさをしっかりと受け止めました。頼子から直接杏奈に「自治体からお金を貰っている」と告げられるシーンがありましたが、あのシーンがなくても、恐らく杏奈は頼子の優しさを受け止められていたでしょう。直接告げられることで、より一層絆が深くなったという、プラスアルファ的な要素だったと思います。すでに杏奈は大きく成長していたのです。

ラスト、杏奈が村を去るシーンがとても爽やかでした。太っちょ豚(←ごめんなさいごめんなさい)にしっかりと謝り、お世話になったみんなや、仲良くなったみんなに感謝をし、手を振ってお別れをしていきます。広大な自然と、爽やかな風を感じるような、そんな素敵なラストだったと思います。

そして、あの部屋からマーニーが手を振っているのが見えるシーンで流れる主題歌が素敵でした。プリシラ・アーンの「Fine On The Outside」です。「泣かす気か!!」っていう演出でした。あれは反則です。

ひとりの少女の成長を、北海道の雄大な自然と、不思議な出会いでの中で描き、そして最後には爽やかで優しい気持ちになれる作品でした。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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