暗いところで待ち合わせ

映画「暗いところで待ち合わせ」 天願大介




あらすじ(ネタバレなし)

目が見えない本間ミチルは父とふたりで暮らしていたが、その父が死んでからはひとりで暮らすことになる。
殺人の容疑をかけられて逃走中の大石アキヒロは、ミチルの家へと逃げ込み、ミチルに気づかれないように潜伏を始める。
ふたりは奇妙な共同生活を送り始める。

感想(ネタバレなし)

乙一原作の作品を初めて見たかもしれません。気になってはいたのですが、結局小説も一冊も読んでいませんし、映画も今回のが初めてとなりました。
人気があるのも納得できました。ストーリーはよく練られていましたし、それほど複雑でもなく、かといって単純というほどでもなく、程良く刺激的だったと思います。
一時期流行った、「感動させたら勝ち」みたいな雰囲気は感じました。「感動」に持っていくために、ストーリー展開が強引になっているところもありました。

視覚障害者や国籍差別のようなテーマも含んではいましたが、テーマを重くしすぎたり、掘り下げすぎたりはしていません。エンターテインメントとしては程良いテーマの重さです。私には物足りませんでした。
ここまでで「程良い」という単語を二度使いましたが、この「程良い」のが魅力なのかなと思いました。あまり重いと多くの観客はついていけなくなってしまうので。

大石アキヒロ役だったチェン・ボーリンの演技が酷かったです。台湾の方ということで、日本語での演技で不利だったのかもしれませんが、ちょっと酷かったです。
この大石アキヒロをいびる、嫌な奴を演じた佐藤浩市が良かったです。本当に嫌な奴でした。最高です。
目が見えない役ということで、田中麗奈は大変難しい演技に挑戦していますが、中々健闘していたと思います。かなり研究して演技に臨んだのだと思います。

設定がサスペンスっぽいのですが、人と人のつながりとか、キャラクターの成長とかを描いている作品です。爽やかな感動を与えてくれました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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身近に目が見えない人がいないのでよく知らなかったのですが、全盲の方も料理や洗濯など、いろいろなことをひとりでやってらっしゃるんですね。こんな言い方は失礼になるのでしょうが、正直驚きました。
外のお話はどうでしょう?横断歩道でクラクションを鳴らされたり、自転車に接触されて白杖を折られた挙句、「邪魔だよ!」と怒鳴られたりするのでしょうか?
ひとりで外を歩くことへの恐怖は、どの程度のものなのでしょうか?

少なくとも、こういったことを考えさせられる問題提起がされています。国籍による差別に関しても同様です。

大石アキヒロは、中国と日本のハーフで、子供の頃は中国に住んでいたという設定です。どこにいても自分の居場所はなく、人を信じられずに生きてきたようです。
映画の中では、自ら他人を遠ざけ、自分の居場所を作る気なんてはじめっから無いんじゃないかと思わせるようなキャラクターなのですが、それは自分の生い立ちから成立した性格なのか、元々そういう性格だったから孤立していたのか、どうなのだろうかと思いました。

とは言え、テーマとしてはここまでです。これより重くなることはありません。観客にちょっと考えるキッカケを与え、あとはしっかりとエンターテインメントに徹する。このあたりのバランスはよく出来ていると思います。

ちょっと気になったのは、殺人の動機です。井川遥が演じた三島ハルミに関しては判断は下せません。ほとんど語られませんでしたから。被害者との間に、語られなかった何かがあった可能性はあります。
大石アキヒトに関してはどうでしょう。殺人の動機としては弱い気がします。職場でのイジメは辛そうでしたが、殺すほどのことでもないように感じました。
実際には大石アキヒロは手を下していないので、「殺人の動機」というの語弊がありますが、「あの女がやっていなかったら自分が殺していた。」とあとで言っていたので、殺す気はあったということなので。

その殺人のシーンなんですが、あれもちょっと無理がないですかね。大石アキヒロがホームから突き落とそうとしていたそのタイミングで、三島ハルミが現れて被害者を突き落とす。電車の運転手はその状況を「見ていない。」と言うし、その後に駆つけて大石アキヒロを追いかける駅員からも、三島ハルミが見えなかったなんて考えられないと思います。運転手は寝ていたのでしょうか。
この辺りの設定はガバガバすぎて、強引さしか感じませんでした。
関係ありませんが、三島ハルミ(井川遥)がホームの端から「にゅっ!!」っと現れるシーンは笑ってしまいました。シュールなギャグかと思いました。

ですが、井川遥は最後の泣きの演技が凄く良かったです。迫真の泣きでした。

そういえば、階段のランプってなんの意味があったんでしょう。ミチルが階段を上る時に明かりをつけて、階段を下りると明かりを消す、あのランプです。冒頭のシーンから、目が見えないのなんで明かりをつけるんだろうと思ってたんです。何かの伏線があって、あとで明かされるのかなとも思ったんですが、結局謎のまま終わってしまいました。なんだったんだろう。

ここまでいろいろと突っ込んできましたが、全体的に爽やかで優しい映画です。(人は死にますが)
ミチルのお父さんは優しいですし、ミチルの親友の二葉カズエは思いやりがありますし。こんな友人がいたら最高ですよ。
ミチルのためを思って時には厳しいことを言ってくれたり、突然現れて外に連れ出してくれたり。こんな友達は滅多にいないから、ミチルはもっとカズエに感謝するべきだと思います。

父が死んだショックと、目が見えない恐怖から外に出なくなったミチルが「外に出てみよう」と思ったのも、この親友のお陰です。映画では、大石アキヒロがかなり大きな役割を果たしたように描かれていましたが、あんなのはちょっとしたサポートです。友情パワーの足下にも及びません。友情パワーは大事です。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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