ほしのこえ

映画「ほしのこえ」 新海誠

あらすじ(ネタバレなし)

中学三年生の長峰美加子(ながみねみかこ)は、国連軍のロボット操縦士選抜メンバーとして宇宙の遠征調査へと向かうことになる。地球には淡い恋心を抱く寺尾昇(てらおのぼる)を残して。美加子が宇宙へと旅立った後もふたりはメールでのやり取りを続けるが、美加子が地球から遠ざかるにつれてメールが届くまでの時間が長くかかるようになっていく。

感想(ネタバレなし)

綺麗で純粋で真っ直ぐな恋心が、切ないタッチで描かれていました。

宇宙やロボットや戦闘などの近未来的ないろいろな設定が出てくるのですが、そういった壮大な設定も、全て「ふたり」という小さな設定に飲み込まれていました。

人類は火星のタルシス台地で異文明の遺跡を発見したが、調査隊は「タルシアン」と呼ばれる異生命体によって全滅させられてしまいます。人類は国連宇宙軍を組織し、タルシアンを調査・迎撃することを決定し、2046年、長峰美加子はその調査隊のメンバーとして宇宙へ赴くことになります。

などという壮大な設定があるのですが、物語のテーマは「距離と時間とふたりの想い」です。美加子が火星や木星にいるころはまだ1時間程度でメールが届きました。しかし、冥王星では6ヶ月、更に遠くへ行けばもっと・・・。
映画のキャッチコピーが、「私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。」ということで、「ロボットや宇宙」という設定よりも「ふたりの恋心」がメインテーマになっています。

他の新海誠の作品に比べると、絵がマンガっぽいというイメージを受けました。特にキャラクター描き方がマンガっぽいタッチです。ですが、空と雲の表現はやはり新海誠という感じで、マンガっぽいキャラのタッチと綺麗な空と雲のタッチが混ざっていて面白かったです。

終盤は激しい戦闘シーンをバックにふたりの想いが語られ、激しさと切なさが折り重なるような非常に魅力的な演出でした。静かに盛り上がっていくような感じで、心の中でチクチクと感動が育っていきます。大袈裟すぎず、控えめすぎず、非常に好感の持てる最後でした。

作品自体が25分位しかなく、その点が少し不満です。あっという間に終わってしまったという感じがしました。もう少しだけあの世界観に浸っていたかったです。

代わりといってはなんですが、DVDには「彼女と彼女の猫」という短編も収録されていました。
あるお姉さんに拾われた猫の物語で、白黒の映像にネコ目線のナレーションがついていました。設定自体は「吾輩は猫である」みたいですが、こちらは可愛くて優しい、ホッとするお話でした。
「新海誠の短編集」みたいな作品があったらいいなと思いました。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの映画を見ていない方はご注意ください。


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メインはちょっと置いといて、先に「彼女と彼女の猫」のお話の方から書かせてください。
5分程の短いお話で、基本的には猫のナレーションしか入っていません。ちなみに、このナレーションの滑舌が悪くて聴きづらいのは何とかしてほしかったです。誰がナレーションをしているのだろうと思って調べたら、新海誠本人様でした!うん、これは仕方ない。プロのナレーションじゃないから仕方ない。

それはともかくとして、物語は猫の目線からお姉さんを観察していきます。優しくて、美しくて、猫はすぐに彼女のことを好きになります。仕事に行く準備をする彼女を見て、仕事に行く彼女を見送って・・・。
ある日、彼女は長い電話の後で泣きます。そういった彼女の姿を見たりしながらも、ふたり(ひとりと一匹)は共に時間を過ごしていきます。
そして、最後は「僕も、それからたぶん彼女も、この世界のことを好きなんだと思う。」とナレーションと共に終わっていきます。

お姉さんのセリフは2回しかありません。電話の後で泣きながら「誰かたすけて。」という場面と、最後の「この世界のことを好きなんだと思う。」という場面です。
この2回しかないセリフのうち、最後のセリフは猫とお姉さんの声が重なります。ずっと猫の目線でお姉さんのことが描かれていたので、お姉さんの感情は表に現れてこなかったのですが、この最後のシーンで猫もお姉さんも同じ気持ちを共有していたということがわかります。

この「共有」に至るまで、淡々としたナレーションと白黒の映像と綺麗なピアノのBGMで物語を進行させていきます。ただただ静かで、落ち着いて、そして最後にはふたり(ひとりと一匹)の気持ちを感じられる綺麗な作品でした。ナレーションだけプロの方にやってもらえば、5分という短い時間で満足できる良い作品だと思いました。

猫の話ばっかり長々と書いてしまいましたが、「ほしのこえ」についても少し書いていこうと思います(ネタバレなしの感想でほとんど書いてしまった!)。

美加子がシリウスへと長距離ワープをしたあとに送ったメールが切なすぎて泣きました。メールは片道8年7ヶ月かかります。

「24歳になったノボルくん、こんにちは!私は15歳のミカコだよ。」

距離だけなら乗り越えられる。でも時間はどうだろうか。8年という時間を乗り越えて、ふたりは想いをつないだままでいられるだろうか。このメールを送る美加子の姿を見るのは本当に辛かったですし、悲しかったです。
一緒にコンビニに寄ってアイスを食べたいだけなのに。ただ昇くんに会いたいだけなのに。好きって言いたいだけなのに。
綺麗な空とピアノBGMに彩られて、美加子の気持ちが綴られていくこのシーンは本当に感動的で、でも悲しくて悲しくて仕方がなかったです。

昇はというと、美加子がシリウスから送ったメールが届く前に既に決心をしていました。ずっと勉強をし、国連宇宙軍の艦隊で勤務することを決めていました。来月から勤務という時期に、美加子からのメールが届きます。映画の中でははっきりとは語られませんが、昇は美加子に会うために努力を続けていたようでした。

そこからは、昇と美加子が交互に言葉を交わしていきます。実際には時間と距離という隔たりがあるので言葉は交わすことはできません。だけど、想いが共にあり、同じ想いを共有していたということがこの最後のシーンで痛いほどに伝わっていきました。そして、最後の「ここにいるよ。」は、ふたりの声が重なります。

最後の声が重なる演出といい、テーマとしては「彼女と彼女の猫」も「ほしのこえ」も同じだったように感じます。ふたりの間にあるものが何だったのかの違いでした。「猫と人」か「時間と距離」の違いでした。どちらの作品も、過度な演出をせずに静かにストーリーが進行していき、その中に織り込まれていくキャラクターたちの想いを優しく描いていて爽やかです。すっかり新海誠ファンとなってしまっていますので、他の作品も楽しみにしておこうと思います。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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