灰と幻想のグリムガル

アニメ「灰と幻想のグリムガル」




あらすじ(ネタバレなし)

主人公のハルヒロは、目覚めると記憶がなくなっていた。そばには同じ境遇の人たちがいた。案内人によって、ここが「グリムガル」という地であると知らされ、魔物と戦う義勇兵として生きるか、街で細々と暮らしていくかの選択を迫られる。なかなか決断できないハルヒロは、結局残り物同士でパーティーを組み、見習い義勇兵として暮らしていくことになる。

感想(ネタバレなし)

ガチ系ファンタジー。ファンタジーなのに実に現実的。

突然ファンタジーの世界に迷い込んでしまうアニメといえば、いろんな女の子(ピンク髪、ツンデレ、くぎゅうなど)とキャッキャウフフしながら騒動に巻き込まれていくのが王道です。そういった物語も面白いのですが、私はガチ系のファンタジーも見たいなとずっと思っていました。
ソードアート・オンライン(以下SAO)が始まったときは大変期待しました。「オンラインゲームの中で死んでしまうと、現実の体の方も死んでしまう」という設定がガチっぽかったからです。ですがフタを開けてみたら、主人公がバッタバッタと敵を倒していくだけのアニメで、大変失望したものです。

灰と幻想のグリムガルはSAOとは違って、極めて現実的なお話でした。ファンタジーなのに「現実的」という言葉を使うのは違和感がありますが、この物語においては一番シックリとくる言葉です。
まず、RPGでは最弱とされることの多いゴブリンが強いです。6人のパーティーで総掛かりで戦ってやっと勝利するレベルです。ハルヒロたちが、「まずは1匹でいるゴブリンを狙おう。」と決心するほどの強さです。

敵は強い、お金はない、パンツも買えない、宿舎はボロボロ。過去の記憶も戻らない中、何もわからない世界で右往左往しながらもなんとか生活をしていきます。モンスターとの戦いも、「命のやり取りをしている」という意識で戦闘をしていて、どれをとっても非常に現実的でした。

さらにいうと、物語の序盤で「主要キャラクターでも死ぬことがある。」ということを視聴者に示したのは効果的でした。これによって物語全体に緊張感が出て、ひとつひとつの戦闘にピリピリした感じが出ていました。命をかけた戦闘をして、その中でパーティーの結束力や絆を強めていく様子がしっかりと描かれていました。「命を預けている」という切迫感が感じられました。

登場するキャラクターたちも魅力的でした。それぞれのキャラクターをしっかりと掘り下げて描いていて、緊迫感のあるストーリーを盛り上げていました。私は特にランタとハルヒロのコンビが好きでした。ランタは周りに対していつも攻撃的な言葉を放っていて、パーティーの中では憎まれ役でした。ランタとハルヒロの間にも軋轢があり、決して仲が良いとはいえません。ですが、戦闘においてはお互いを信頼し、絶妙なコンビネーションを見せたりします。仕事のときはしっかりとやるビジネスライクな関係と思いきや、普段の会話でも結構絶妙な漫才をしたりもします。
このふたりの微妙な関係性は、非常に魅力的でした。

魅力的といえば、我らがユメです。元気で楽しくて、思考回路がちょっとおかしくて関西弁のユメです!!
辛いことの多いグリムガルで、ユメたその元気は癒しです!ユメが灰と幻想の世界に彩りを加えたのです!!ユメなくして灰と幻想のグリムガルは語れないと思います!!

「散々真面目な話をしておいて、結局最後は美少女かよ。」と言われそうですが、それはユメたそがかわいいのだからしかたがありません。私のせいではありません。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのアニメを見ていない方はご注意ください。


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序盤からかなり緊張感あるストーリー展開でしたが、やはりマナトが死んでしまってからのお話が魅力的だったと思います。

緊迫感のあるグリムガルの世界でも回復魔法が存在するようだったので、正直ちょっと安心して見ていました。ですが、マナトがあっさり死んでしまったのを見て、「ええ!普通に死んじゃうの?」と驚いたものです。チームのリーダー的存在で、全員の心の支えのような役割だったマナトが死んでしまって、パーティーは、喪失感とこの先への不安感でボロボロになります。パーティーメンバーがそれぞれに想いを抱きながら、それでもお互いを思いやりながら、みんなでパーティーを立て直していきます。この辺りはそれぞれのキャラクターがすごく丁寧に描かれていて非常に良かったです。ユメがハルヒロを慰めるために抱きしめるシーンもありました(ハルヒロ許さん!!)
これを「恋愛」とせずに、相手を思う気持ちと絆の強さとして描いたところに好感が持てました(だがハルヒロは許さん!!)。

物語の後半も、テーマは「パーティーの絆」でした。
マナトが死んでしまい、回復魔法を使える神官がいなくなってしまったパーティーは、新たな神官としてメリイを迎い入れます。しかし、メリイはメンバー同士のコミュニケーションをあまり取ろうとせず、多少の傷では回復魔法を使おうともしません。協調性はゼロで、これまでもパーティーに参加しては抜け、参加しては抜けを続けていたようでした。
そんなメリイに対して、なんとかメンバーみんなでパーティーに受け入れようとする姿が感動的でしたし、数々の戦闘を通して、次第に信頼関係を結んでいく過程は(ユメのかわいさを除くと)灰と幻想のグリムガルの大きな見所だと思います。

メリイは、かつてパーティーのほとんどが死んでしまうという経験をしていました。自分の魔法力が尽きて回復ができなかったことを悔やんだメリイは、いざというときのために魔法力を温存するようになりました。ハルヒロのパーティーメンバーたちは、次第にメリイのやり方を受け入れていきます。自分たちを信頼してもらうためには、まずは相手を信頼するという考えを共有し、メリイを受け入れていきます。
ファンタジー系のアニメは戦闘シーンがメインになるものが多いのですが、灰と幻想のグリムガルは、こういったキャラクターの心情をしっかりと掘り下げているのが素晴らしいです。

メリイはかつてのメンバーが死んだ場所へはずっと近づきませんでしたが、「このメンバーとなら」と思い、過去を断ち切るためにその場所へと赴きます。
グリムガルの世界では、死者は火葬しなければアンデッドとなって彷徨い続けることになります。メリイのかつての仲間は、そこでアンデッドとなっていました。彼らと遭遇したメリイは、普段は後衛で援護をする役割なのに、「前に出たい。」と言い出します。メリイの想いを汲んだパーティーメンバーたちは、強敵を相手にして、今まで試したことのないフォーメーションでメリイを援護していきます。

そしてメリイは、かつての仲間たちを魔法で光へ返していきました。このエピソードは本当に感動的でした。メリイの想いがヒシヒシと伝わってきたのはもちろんですが、ハルヒロたちのパーティーの絆の強さも伝わってくる、素晴らしいエピソードでした。

物語全体を通して、戦闘よりもパーティーメンバーの心情を大事にしていましたし、「怒りで急に凄いパワーが出てきた」というようなヘッポコな設定もありませんでした。最後、ハルヒロが大ボスであるデッドスポットを倒してしまうのは、超常パワーって感じでちょっといただけませんでしたが、それ以外では「精神力」で急にすごい力が使えてしまったということもなく、「現実的」で良かったです。

ファンタジーなのに「現実的」というかなり異色の物語でした。ですが、そこに大きな魅力を感じる作品であったと思います。続きが気になって仕方ないので、第2期を切に所望します!

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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