文鳥

小説「文鳥」 夏目漱石




あらすじ(ネタバレなし)

主人公は、三重吉(みえきち)に文鳥を飼うよう勧められる。しばらくして三重吉が連れてきた文鳥を、主人公は不器用ながらもかわいがる。

感想(ネタバレなし)

「千代々々(ちよちよ)」という表される文鳥の鳴き声がかわいい!

小説というよりも随筆というようなスタイルでした。文鳥とどのように関わってきたかや、「こんなことがあった」というようなエピソードが淡々と書かれています。主人公が過去に関わった女性の思い出と絡めながら、やや切ない展開になっています。

私は過去に文鳥を飼っていたのですが、小説を読みながら「そうそう!わかる!」と思っていました。文鳥の描写が瑞々しくて、姿や動作を頭の中で鮮やかに想像できました。うちで飼っていた文鳥はきかん坊で、とんでもない暴れ者だったのですが、小説の中の文鳥は良い子のようでした。「ちち」という鳴き声の表現は普通なのですが、「千代々々(ちよちよ)」という表現が面白かったです。
普通に表現すれば「チュンチュン」だと思うのですが、私はこの「千代々々」とうい表現を大変気に入りました。かわいい!!「千代」とう漢字を使っているのも雅で良いです。

ストーリー自体は非常に淡々として、面白いことが起こるわけでもなく、山も谷もほとんどありません。短いお話で、あっという間に終わってしまします。その淡々とした短いお話の中の雰囲気が私は好きでした。随筆っぽいけれども、完全に随筆ではない。ちゃんと小説です。ただ文鳥を中心とした出来事が書いてあるだけでなく、主人公の寂しさは悲しさのようなものを感じる、ちょっと不思議な雰囲気のお話でした。

私が文鳥大好きだから好感が持てたっていうのもあるかもしれませんが・・・・。
文鳥かわいいですよね!!文鳥かわいい!!

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこの小説を読んでいない方はご注意ください。


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最後の主人公酷かったですね!

始めはせっせと文鳥の世話をする主人公ですが、朝起きるのは遅いし、だんだんと世話をサボるようになるし、飼い主としては落第点です。気持ちはわかります。あいつら平気で餌をバサバサ散らかすし、寒くなってくると水を替えるのが辛くなってきますから。
ときどき主人公の家の者が世話を手伝うようになりますが、だんだんとそれが当然のことのようになっていきます。しかし、家の者は主人公ほど文鳥に熱心なわけではなく、毎度世話をするわけではありません。

結果は当然のことでした。数日放ったらかしにされた文鳥は、ある日死んでしまいます。
主人公は下女を呼んで怒鳴りつけます。そして文鳥を飼うように勧めた三重吉に手紙を出します。

「家人(うちのもの)が餌を遣らないものだから、文鳥はとうとう死んでしまった。たのみもせぬものを籠(かご)へ入れて、しかも餌を遣る義務さえ尽くさないのは残酷の至りだ」という内容です。
これに対して三重吉が返した返事には、文鳥は可哀想なことを致しましたとあるばかりで家人が悪いとも残酷だとも一向に書いていませんでした。

そりゃそうです。どう見ても主人公の過失であり、家人が責められる謂れなどどこにもありません。
しかし、恐らく主人公もそのことはわかっていたのだと思います。わかっていながらも、喪失感をどうしようもできずに八つ当たりしたのでしょう。それだけに文鳥のことが好きだったのです。確かに我がままで自分勝手な主人公ではありますが、文鳥に対する愛情は伝わってきました。

主人公は文鳥に、昔知っていた女性の姿を重ねます。主人公とその女性との詳しい関係は語られませんが、かなり親しい間柄だったようです。ですが、「この女は今嫁に行った。」と書いてあり、ここにも喪失感のようなものが描かれています。

小説「文鳥」は、文鳥の活き活きと姿が描かれている反面、全体的には「喪失感」を感じる小説でした。親しかった女性の喪失と、文鳥の喪失と、どちらも好いていたものが自分のもとから去ってしまう悲しみを描いています。主人公はずっとひとりで小説を書いています。文鳥がいた頃は、ひとりでありながらも文鳥という存在が身近にありました。しかし物語の最後で文鳥が死んでしまったあと、主人公はまたひとりで小説を書き続けなければなりません。「孤独」に耐えなければなりません。そんな「これから」を感じさせる、切ないラストになっていました。

もちろん主人公は漱石自身なのでしょう。小説を書いているときの自らの孤独や寂しさを、「文鳥」という小説の中に描き出したのだと思います。

読み始めは「文鳥かわいいよ!文鳥かわいいよ!!!」と読んでいたのですが、途中からはしっかりと物語に入り込んで読むことができました。切ない雰囲気が魅力的な作品でした。

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛するフリーライター。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない乱読派。
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