ぼくらの

アニメ「ぼくらの」




あらすじ(ネタバレなし)

夏休みの自然学校に参加した15人の少年少女。彼らはココペリという人物の「ゲームをしないか?」という誘いに乗り、ある契約をする。しかしそれはただのゲームではなく、実際に巨大ロボットに乗って敵と戦うというものであった。契約した人間の中からひとりパイロットが選ばれ、そのパイロットが敵と戦うことになる。だが次第に、この戦闘に負ければこの宇宙が滅亡することや、パイロットは戦いが終わると死ぬということが明らかになっていく。

感想(ネタバレなし)

「死」を見つめることで、少年少女が「生と死」「人とのつながり」を見つめ直していくヒューマンドラマ。

いわゆるロボット戦闘ものアニメです。アクションシーンや戦闘シーンを重視しない私にとっては非常に苦手なジャンルです。と、思って見ていたのですが、戦闘シーンは重要ではありませんでした。逆にロボット戦闘ものを期待して見た人にとっては、ガッカリ感甚だしかったと思います。ガンダムやヱヴァンゲリヲンなんかを見るといつも思うのですが、あいつらちょっと機敏に動きすぎです。「この質量でこの動き!」なんて思うとついついソワソワしてしまうのですが、「ぼくらの」での戦闘シーンは安心のノロノロ感です。その代償に、スペクタルも何もありません。
ついでに言うと、味方ロボットのスペックが高すぎて全然負ける気がしない。「オレ強ぇ!」っていうタイプの戦闘シーンが好きな人にとっては良いのかもしれませんが、戦闘の緊張感は全然無くて、正直戦闘シーンは5秒くらいでいいんじゃないかと思ったりもしました。

戦闘シーンについて散々ケチをつけましたが、それでも見続けたのは、キャラクターそれぞれの事情や心情を描きながら、それぞれのドラマをしっかりと描けていたからです。私にとっては戦闘シーンよりも、こっちの方が2億倍くらい重要です。
何よりも良いと思ったのは、「地球のために!自分が犠牲になっても戦うぜ!」なんていう三文ヒーローみたいなセリフを吐くやつがいなかったことです。それぞれのキャラクターが、それぞれの戦う理由を見つけて(見つけられずに死んでしまうキャラもいたけど)、自らの命をかけて戦っていきます。「自分の死」が見えているからこそ生じる強い感情を、ひとりひとり丁寧に描いていました。

そのひとりひとりを描きながらも、ストーリー全体の大きな流れは少しずつ進んでいきます。しかも全体のストーリーが進んでいくごとに、「なんて理不尽な!」ってことになっていき、「これどうするんだろう?なんとかなるのか?」と思いながら、(戦闘シーンと違ってこちらは)緊張感を持って見ることができます。3話くらいからは、本当に最後の最後まで緊張感あるストーリーでした。

その分、ラストは残念で仕方ありません。こんなラストを見るためにドキドキしながら見ていたわけではありません。せっかくひとりひとりのキャラクターが良く描けていたのに!!ラストがしっかりしていれば名作にもなり得た作品なだけに、本当に残念です。
なお、原作コミック(すみません未読です!)の方は途中からストーリーが全然違うそうなので、そちらのラストに期待しようと思っています。

感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心に触れる記述があります。まだこのアニメを見ていない方はご注意ください。


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終わり方が本当にプンスカなので、まずはこのプンスカを発散させてください!!

キャラクター個人のドラマは抜きにして、「ぼくらの」の世界のルールを書くと次のようになります。
宇宙は時に分岐し、パラレルワールドのような宇宙が作られていく→あんまり増えてしまうと大変なので、間引きの必要がある→どの宇宙を間引きするか決めるために、その宇宙の人間に巨大ロボを操縦させて戦わせる→全戦勝ち抜けばその宇宙は存続、1戦でも負ければ滅亡→最後に残ったパイロットは、平行世界の別の地球に行って、新たなパイロットを契約させ、戦闘を引き継ぐ。最後のパイロットは死なない→最後まで勝ち残った宇宙も、支配者たちの宇宙に生命力を吸われ続ける。

この地球のパイロットたちが奇策を思いついて、支配者たちをギャフンと言わせるラストでも、やっぱり支配者たちには敵わなかったよっていうラストでも、どちらでも良いと思っていました。ところが実際のラストは「なんじゃそりゃ!」です。最後の戦闘を勝ち抜いた宇白順(うしろじゅん)は、ロボットを自ら破壊して、次の宇宙には引き継がせないというラストです!そんな誰でも思いつくような策、支配者たちが対策を打っていないわけないじゃないか!!これだけ緊張感あるストーリーだったのに、こんなにしょっぱいラストでよいわけがありません!おこです!

ラストもラスト、戦いの全てを見たあとで生き残った宇白順の妹の宇白可奈(うしろかな・以下カナちゃん)が、矢村大一(やむらだいいち・以下ダイチ)の兄弟たちに真実を伝えるという所は好きでした。ダイチたち兄弟の父は失踪していて、兄弟たちは「父は家族を裏切った」と思いつつも、「何かやむを得ぬ事情があったんだ」と信じてもいました。ダイチは自分がパイロットとなり、これから死ぬということを兄弟に告げずに戦いに臨みました。父と同じように、忽然と兄弟の前から消えたのです。残された兄弟にとっては、父だけではなく、頼りにしていた兄にも裏切られたという気持ちが残りました。その心に傷を持った兄弟たちに、カナちゃんが真実を語ります。なかなか和むラストでした。

「ぼくらの」の見どころは、こういったそれぞれのキャラクターのエピソードです。「死」を目前にしたからこそ、強い感情を抱いて暮らした最後の瞬間が輝きます。特に印象に残ったキャラクターを何人か書かせてください。

一番心に響いいたエピソードは、阿野万記(あのまき・以下マキ)のエピソードです。
彼女は両親の本当の娘ではなく、養子でした。長い間子供ができなかった両親に、待ちわびた子供ができました。出産予定日まであと僅かというところで、マキはパイロットに選ばれます。マキは、自分を実の子のように可愛がってくれた両親に強く感謝し、「自分がいなくなっても、新しく産まれてくる子が両親を幸せにしてくれる。だからこの世界を守る。」と決心し戦います。マキが両親に対して「初めての子なんだから!」というようなことを言ったのに対し、父は事も無げに「何言ってるんだ?初めての子はおまえじゃないか。」と返すシーンは本当に泣けました。
そもそも家族モノに滅法弱い私ですので、こういった温かい家族エピソードを見せられると瞬殺です。

同じ家族モノでは、半井摩子(なからいまこ・以下ナカマ)のエピソードにもやられました。ナカマの母は水商売をしていました。それが原因でナカマは学校で苛められました。そして、自らが模範的であることで他者から何も言わせないようにしようとします。
ナカマはパイロットに選ばれた後、母の生き様を見ることになります。母がどんな決心で自分を育ててきたか、どれだけ周りの人間に愛される人物であったか。自分の「死」と向き合ったことで、初めて母の本質が見えてきます。ナカマが母の勤めるスナックに行って、みんなでワイノワイノやるシーンは心に染みました。

門司邦彦(もじくにひこ・以下モジ)のエピソードも好きでした。
同じ孤児院で育ったモジとナギとツバサ。ずっと仲良くしていたのですが、ナギは心臓の病気を患ってしまい、ドナーが現れなければ死んでまう運命にありました。しかしモジは思ってしまいます。「ナギが死ねば、自分がツバサと結ばれる。」と。そんな折にパイロットになったことから、「これはバツだ。」と思います。そしてモジは、「自分が死んだら、自分の心臓をナギに移植してほしい。」と頼みます。軽い気持ちで検査を受けたら、ナギのドナーとして最適だということがわかったから。そして、ナギとツバサが結ばれることを祝福してモジは戦いに挑むことになります。
友情モノに滅法弱い私は、それはもうオイオイと泣きました。こんな温かい友情エピソード見せられたら瞬殺です。

一番印象に残ったセリフは、往住愛子(とこすみあいこ・以下アンコ)が父に対して言った「お父さんは家族のために戦って。私は地球のために戦うから。」です。
ニュースキャスターだったアンコの父は、政治的な策略にハメられて、不倫報道をされてしまいます。いや、不倫は事実だったみたいなんですけど・・・。娘が死ぬかもしれないという状況で何という体たらくか!!
家に帰ることにも、母に会うことにも躊躇う父に放ったこのセリフです。アンコだって「地球のために戦う」なんて嘘ですけど。アンコだって家族のために戦うに決まっています。こんなセリフを女子中学生に言わせた父親はアレですけど、死と立ち向かって強くなったアンコの、非常に力のあるセリフでした。

他にも良いエピソードは本当にたくさんありました。ひとりひとりを丁寧に描けていて非常に良かったです。だからこそ(何度も言いますが)、ラストをなんとかしてくれ!ラストさえ良ければ、本当に名作になり得たと思います(もう一度言った!)。
少年少女が自分の命を賭して、戦う意味を探していくお話ですよ!最後をあやふやにして終わらせて良いわけがないのです!しっかりと物語全体とキャラクターの気持ちを読み取って作ってくださいね!本当に!
いや!すいません!原作を読みます!原作のラストに期待します!

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ぺんぎん

ぺんぎん の紹介

物語をこよなく愛する一般人。 物語ならば、映画、小説、アニメ、ゲーム、マンガなどなど、形態は問いません。ジャンルや作者に縛られない濫読派。
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